
このニュースは、2025年7月31日、アメリカ政府が、国民の医療情報を『Google』などの巨大テック企業と共有する新プログラムを発表したという、海外の話ですわ。便利になるんやろけど、そんな大事なこと、よう知らん会社にまで見られて、ほんまに大丈夫なんやろかねぇ。わしゃ、ちょっと心配やわ。
このニュースの要点は、下記3つです。
- 米政府が、個人の医療記録を『Google』など60以上の民間企業と共有する新システムを発表しました。
- 患者の利便性向上を目的とする一方、専門家からはプライバシー侵害への強い懸念が表明されています。
- 政府は「本人の同意が必須で、データは安全に保たれる」と説明していますが、過去の事例から不安視されています。
目次
あなたの病歴を、ダイエットアプリが知る未来
2025年7月31日、米国のトランプ政権は、国民の個人的な健康データや医療記録を、民間企業が運営するシステムやアプリを横断して共有できる、新しいプログラムの立ち上げを発表しました。
この計画には、『Google』、『Amazon』、『Apple』といった巨大テック企業や、大手保険会社など60以上の企業が参加を表明しています。これにより、例えば人気のダイエットアプリ『Noom』は、利用者の同意があれば、病院での血液検査の結果や過去の病歴といった医療記録にアクセスできるようになります。そして、そのデータを基に、AIが個人に最適化された減量プランを提案する、といったことが可能になるのです。
政府と企業が語る「大義名分」
政権側は、このシステム導入のメリットを「利便性の向上」だと強調しています。ドナルド・トランプ大統領(当時)も下記のようにコメントしています。
何十年もの間、米国の医療ネットワークはハイテク化が遅れていました。今日の発表で、我々は医療をデジタル時代へと導く、大きな一歩を踏み出します。
病院のCEOも、「患者が様々な医療機関から自身の記録を取り寄せる手間が省け、より正確な診断に繋がる」と歓迎の意を示しています。これまでは、医療記録の共有にFAXが必要なことさえあったのです。
専門家が鳴らす警鐘:「極めて大きな倫理的・法的懸念がある」
しかし、この「便利さ」の裏側で、専門家は深刻なプライバシー侵害のリスクに警鐘を鳴らしています。
『ジョージタウン大学』の法学者、ローレンス・ゴスティン氏 (Lawrence Gostin) は、「米国の患者は、自身の医療記録が、自分や家族に害を及ぼす形で使われることを、非常に心配すべきです」と、強い懸念を表明しました。
医療記録には、薬物乱用や精神疾患の病歴など、極めて機微な情報が含まれます。また、『デジタル民主主義センター』のジェフリー・チェスター氏 (Jeffrey Chester) は、「この計画は、機微で個人的な健康情報が、さらに利用され、収益化されるための扉を開くものだ」と批判しています。
比較して見えてくるポイント
このアメリカの動き、他の国の制度や、他の業界の動きと比べると、私たちが何を差し出すことになるのかが見えてきます。
vs 欧州のデータ保護 (GDPR)
米国の医療情報共有 | 欧州連合(EU) |
利便性向上とイノベーションを優先し、企業のデータ活用を促進する「オプトイン(同意取得)」方式。個人の自己責任が問われます。 | 個人のプライバシー保護を最優先し、データの収集・利用を厳しく制限。企業側が厳格な管理責任を負うのが特徴です。 |
vs 金融業界のデータ連携
米国の医療情報共有 | 日本の銀行API連携など |
命に関わる最も機微な情報を扱うにも関わらず、まだ法整備が追いついていないのが現状。リスクが非常に高いと言えます。 | 金融庁の監督のもと、厳格なセキュリティ基準と法規制に基づいてデータ連携が行われます。医療分野より先行しています。 |
アメリカの動きは、イノベーションを加速させる可能性がある一方で、個人のプライバシー保護という点では、非常に危ういバランスの上に成り立っていると言えるでしょう。
このアメリカの動きは、他人事ではありません。
日本でも、マイナンバーカードと健康保険証の一体化が進み、個人の医療情報がデジタル化されつつあります。今回の米国の事例は、その先で「利便性の追求」と「プライバシーの保護」がどう衝突しうるかを、私たちに示しています。
今はまだ、日本のデータが民間企業に広く共有される計画はありません。しかし、一度デジタル化された情報が、将来どのように活用(あるいは悪用)される可能性があるのか。アメリカで起きている議論は、私たちが自身の医療情報をどう守り、どう活用していくべきかを考える上で、重要な示唆を与えてくれます。
重要キーワード
「パーソナルヘルスレコード(Personal Health Record, PHR)」とは?
個人が自身の医療・健康情報を、生涯にわたって電子的に管理する仕組みのことです。病院の電子カルテだけでなく、日々の体重や血圧、歩数といった自分で記録するデータも含まれます。今回の米国の新プログラムは、このPHRを、本人の同意のもとで様々な企業が共有・活用できるようにする、という壮大な構想です。利便性が飛躍的に向上する一方、プライバシー保護が最大の課題となります。
みんなの生声
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- 米政府が、個人の医療記録を『Google』など60以上の民間企業と共有する新システムを発表しました。
- 患者の利便性向上を目的とする一方、専門家からはプライバシー侵害への強い懸念が表明されています。
- 政府は「本人の同意が必須で、データは安全に保たれる」と説明していますが、過去の事例から不安視されています。
あなたに問う
自分の体のこと、お医者さん以外の人にまで知られてしまうんやな。そんな時代がもうそこまで来てるんやねぇ。便利になるんはええことや。けどな、昔から言うやろ、「家の敷居をまたがせる相手は、よう選べ」ってな。体の情報っちゅうんは、それくらい大事なもんやと、わしは思いますけどな。
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