
この記事では、ハーバード大学のハワード・ガードナー教授が提唱する「多重知能理論」を基に、仕事一筋だった50代がセカンドキャリアや生きがいを見つけるための、具体的な自己分析の方法を解説します。
この記事を読めば、下記3つのことがわかります。
- IQや学歴だけでは測れない、あなたに眠る8つの才能の種類
- 人生の後半で本当に目指すべき「善い仕事」の3つの条件
- 自分の強みを活かせるセカンドキャリアや生きがいを見つけるヒント
▼ 情報元紹介
- 話し手: ハワード・ガードナー(Howard Gardner)教授
- 経歴: アメリカの心理学者で、1983年に「多重知能理論」を提唱したことで知られます。ハーバード大学教育大学院の教育心理学教授や同大学のプロジェクト・ゼロ研究所の責任者を務めました。ガードナーの理論は、人間の知能を言語的・論理的だけでなく、複数の異なる知能に分けて捉えるもので、教育理論に大きな影響を与えています。1981年にマッカーサー・フェローシップ賞も受賞しました。
- 出典元: ハワード・ガードナーが多重知能について語る – Blackboard BbWorld 2016 HD
※この記事は、講演の紹介であり、医学的アドバイスではありません。健康に関する判断は必ず医師にご相談ください。
目次
もし、今のあなたから「仕事」という肩書を奪ったら、何が残りますか?

長年勤め上げた会社のオフィス。窓の外に広がる見慣れた景色を眺めながら、ふと思う。
「部長」という肩書と、この分厚くなった名刺入れ。もし明日、これらすべてがなくなったら、自分には一体、何が残るのだろうか。
家族もいる。趣味もある。しかし、人生のほとんどを捧げてきた「仕事の自分」が消えた後、社会の中で「何者でもない自分」として生きていくことに、言いようのない恐怖を感じてしまう。そんな経験はありませんか。
なぜ、世の中の「適性診断」は、しっくりこないのか?

分かります。これまでも、あなたは何度も自分探しを試みてきたはずです。
インターネットの無料診断を受けては「まあ、こんなものか」とため息をつき、キャリアカウンセラーに相談しては、どこか他人事のようなアドバイスに失望する。私もそうでした。
なぜなら、世の中のモノサシは、あまりにも画一的すぎるのです。私たちの価値を「論理的思考力」や「コミュニケーション能力」といった、ごく一部の能力だけで測ろうとする。しかし、人間の才能は、そんなに単純なものでしょうか。思い出してください。あなたが仕事で評価されてきた能力は、これら8つの才能のうち、おそらくほんの1つか2つに過ぎません。
どうか、諦めないでください。ハーバード大学の世界的権威が提示する「8つの知性」という新しい地図が、あなたも気づいていない「新しい道」を照らし出してくれるはずです。
人生100年時代の羅針盤。ハーバード式「8つの知性」で自分を再発見

ハーバード大学のハワード・ガードナー教授が提唱する「多重知能理論(Multiple Intelligences Theory)」は、「人間の知能はIQのような単一のものではなく、少なくとも8つの異なる領域に存在する」という画期的な理論です。これは、大人になった私たちが自分自身を再発見するための、最高のツールとなり得ます。
あなたはどのタイプ?8つの知性セルフチェックリスト
あなたの中に眠る才能はどれでしょうか。これまでの人生を振り返りながら、考えてみてください。
- 言語的知性: 言葉を巧みに操る。文章を書いたり、話したりするのが得意。
- 論理数学的知性: 筋道を立てて考え、数字を扱うのが得意。いわゆる「理系脳」。
- 音楽的知性: リズムやメロディーに敏感で、演奏や作曲が得意。
- 空間的知性: 地図を読んだり、物の配置を考えたりするのが得意。
- 身体運動的知性: スポーツやダンス、手先を使う細かい作業が得意。
- 対人的知性: 他人の気持ちを理解し、うまく協力関係を築ける。
- 内省的知性: 自分自身を深く理解し、自分の感情や考えをコントロールできる。
- 博物的知性: 自然や動植物を観察し、分類したり、違いを見つけたりするのが得意。
音楽、人間関係、自己理解…すべてが「知性」である
この理論の素晴らしい点は、これまで「趣味」や「性格」で片付けられてきた多くの能力を、IQと同等に価値のある「知性」として認めていることです。
仕事ではあまり役に立たなかったかもしれない「音楽的知性」や、定年後にこそ重要になる「対人的知性」。あなたの価値は、決して一つのモノサシでは測れないのです。
知性は何のために使うべきか?ガードナーの最終結論
ガードナー教授は、さらに問いを深めます。「これらの知性を、私たちは何のために使うべきか?」と。彼の答えは、「善い仕事(Good Work)」と「善い市民(Good Citizen)」になるため、というものでした。
特に「善い仕事」は、人生の後半を豊かにする上で極めて重要な概念です。
「善い仕事」の3条件:卓越性、エンゲージメント、倫理
「善い仕事」とは、単に稼げる仕事のことではありません。以下の3つの”E”が揃った活動を指します。
- Excellence(卓越性): その分野で高いレベルの技術や知識を持っていること。
- Engagement(エンゲージメント): その活動に情熱を感じ、意味を見出していること。
- Ethics(倫理): その活動を、倫理的で社会的に責任ある方法で行うこと。
人生の後半戦で目指すべきは、この3つのEが重なる領域を見つけ出すことなのです。
眠っていた才能を開花させる、今日から始める「自分育て」

自分の新たな可能性に気づいたら、次はその才能を育て、活かす番です。幸いなことに、現代にはそのためのツールが豊富に揃っています。
①8つの知性を伸ばす具体的な方法
自分の得意な知性、あるいはこれから伸ばしたい知性が見つかったら、それをテーマに新しい学びを始めてみませんか。例えば、「博物的知性」が強いと感じたなら、植物や歴史に関する講座を受けてみるのも良いでしょう。
最近では、多種多様なジャンルのオンライン講座があり、自宅にいながら新しい世界の扉を開くことができます。知的好奇心を満たすことは、最高のアンチエイジングです。
②あなたの「善い仕事」を見つける
自分の強みと情熱、そして社会への貢献が重なる「善い仕事」を見つけるのは、一人では難しい作業かもしれません。そんな時は、プロの力を借りるのも賢明な選択です。
セカンドキャリアに特化したコーチングサービスなどを利用すれば、専門家との対話を通じて、自分では気づかなかった可能性や、具体的なキャリアプランを発見できるでしょう。
③新しいコミュニティに参加する
新しい才能や興味を育てる上で、仲間との出会いは欠かせません。同じ知性を持つ人、あるいは全く違う知性を持つ人との交流は、あなたの世界をさらに広げてくれます。
共通の趣味や関心で繋がれる大人向けのコミュニティアプリやマッチングサービスも増えています。勇気を出して一歩踏み出すことで、新しい人間関係という、かけがえのない財産が得られるはずです。
みんなの生声
関連Q&A

Q. セカンドキャリアの具体的な成功事例には何があるか?
A. 成功事例は多様です。例えば、長年の営業経験を活かしてコンサルタントとして独立したり、趣味のガーデニングや木工を仕事にしたりする方。また、介護やIT系の資格を新たに取得し、全く異なる業界へ挑戦する方もいます。
Q. どうやって自分のセカンドキャリアの方向性を見つけるか?
A. まずは自己分析から始めましょう。この記事で紹介した「8つの知性」を参考に、仕事以外での得意なことや、心から楽しいと感じることを書き出します。意外な強みや興味の方向性が見えてきます。キャリアコーチングで客観的な意見を求めるのも有効です。
Q. 企業はどのように中高年のセカンドキャリアを支援しているか?
A. 近年、多くの企業が支援策を導入しています。定年前の社員を対象にした「キャリアデザイン研修」の実施や、新しいスキルを学ぶ「リスキリング」支援、副業や社内公募制度の拡充などが代表的です。まずは自社の人事制度を確認してみましょう。
まとめ
あらためて、本記事の要点をおさらいします。
- 人間の才能は一つではなく、あなたの中にも8つの知性が眠っている。
- 人生の後半は、その才能を「善い仕事」のために使うことを目指す。
- 「善い仕事」とは、卓越性・エンゲージメント・倫理が揃った活動のこと。
退職という節目は、分厚くなった名刺入れを空にする時かもしれません。
しかし、その空いたスペースにこそ、新しい才能という名のカードが入るのです。まずは一枚、自分の手で探してみませんか。そのカードの手触りは、きっとあなたが思っているよりも、ずっと温かいはずです。