
英国政府が発表した衝撃的なニュースをお届けします。この問題、実は明日の日本の姿かもしれません。遠い国の話と侮らず、自分の老後と向き合うきっかけにしてみませんか?
このニュースの要点は、下記3つです。
- 2025年7月21日、英国政府は、将来の年金危機に対処するため「年金委員会」を約20年ぶりに再設立した。
- 現状のままでは、2050年の退職者の私的年金収入は、現在より8%も低くなると予測されている。
- 労働年齢の成人の半数近くが貯蓄ゼロであり、特に低所得者、自営業者、女性で格差が深刻化している。
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「将来の年金生活者は、今より貧しくなる」英国政府が認めた不都合な真実
「今の高齢者は年金をたくさんもらえていいね」。そんな会話が、日本の居酒屋ではよく聞かれます。しかし、遠いヨーロッパの国、英国では、この常識が覆されようとしています。
2025年7月21日、英国政府は、国の年金制度の未来を議論するため、約20年ぶりに「年金委員会 (Pensions Commission)」を再設立するという、異例の発表を行いました。その背景には、「このままでは、未来の年金生活者は、今の年金生活者よりも貧しくなる」という、衝撃的かつ不都合な真実がありました。
英国を襲う「静かなる危機」の正体
政府が発表した最新の分析データは、英国社会が直面する「静かなる危機」の深刻さを浮き彫りにしています。
- 未来の年金収入は「8%減」:
現状の制度が続けば、2050年に退職する人々の私的年金収入は、現在の退職者と比較して、年間800ポンド(約16万円)、率にして8%も少なくなると予測されています。 - 労働世代の「貯蓄ゼロ」問題:
労働年齢にある成人のほぼ半数(45%)が、年金のための貯蓄を全くしていません。特に、低所得者層、自営業者、そして一部の少数民族コミュニティでは、その傾向が顕著です。 - 深刻な「ジェンダー格差」:
男女間の私的年金資産には、48%という看過できない格差が存在します。典型的な女性が退職時に期待できる私的年金収入は、男性の半分以下(週あたり約100ポンドに対し、男性は約200ポンド)という厳しい現実があります。
2012年に導入された、従業員を年金制度に自動的に加入させる「自動加入 (Automatic Enrolment)」制度は、貯蓄参加者の数を劇的に増やしました。しかし、その多くは法律で定められた最低限の掛金しか拠出しておらず、十分な老後資金を準備するには至っていないのです。
なぜ今、「年金委員会」を再設立するのか?
この危機的な状況に対し、英国政府は、かつて大きな成功を収めた「年金委員会」を再び立ち上げるという決断を下しました。
2006年に設立された前回の委員会は、超党派のコンセンサスを形成し、「自動加入」制度という画期的な改革を実現させました。今回再設立される委員会も、ビジネス界、労働組合、学界から尊敬を集める専門家で構成され、2027年の最終報告を目指し、長期的で持続可能な年金制度のあり方を議論します。
リズ・ケンダル (Liz Kendall) 労働・年金大臣は、「すべての人が、尊厳と自由のある、まともな退職後の収入を得られる権利がある。しかし、多くの人々、特に低賃金や自営業の人々にとって、それが現実ではない」と述べ、この改革への強い意志を示しました。
日本にとっても他人事ではない、英国からの警告
このニュースは、単なる英国の国内問題ではありません。少子高齢化、非正規雇用の増加、そして深刻化する格差。英国が直面する課題は、数年後の日本の姿と重なる部分が少なくありません。
公的年金だけでは、豊かな老後を送ることが難しい時代。私たち一人ひとりが、自らの老後資金について、より真剣に、そして具体的に考え始めるべき時が来ていることを、この英国からのニュースは強く示唆しているのです。
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- 2025年7月21日、英国政府は、将来の年金危機に対処するため「年金委員会」を約20年ぶりに再設立した。
- 現状のままでは、2050年の退職者の私的年金収入は、現在より8%も低くなると予測されている。
- 労働年齢の成人の半数近くが貯蓄ゼロであり、特に低所得者、自営業者、女性で格差が深刻化している。
『私たちの時代は恵まれていた』と語る団塊世代も、『自分たちの時代は最悪だ』と嘆く未来の若者も、それぞれに大変さがあるのだと思います。しかし、国が何とかしてくれるだろうとすべてを任せきりにしている方こそ、いちばん心配です。NISA や iDeCo などの制度を『よく分からない』と敬遠したままでは、気づいたときには年金だけでは暮らしが成り立たない老後が待っているかもしれません。