このニュースは、2025年10月19日、平均寿命から健康寿命を差し引いた「不健康な状態で生きる期間」の国別ランキングが発表され、中東の富裕国が上位を占める中、先進国では唯一アメリカがトップ10入りしたと海外メディアが報じたものです。ただ長生きするだけやのうて、元気で長生きしたいわな。医療は進んでも、なんで不健康な時間が増えるんか、わてらも他人事やないで。
このニュースの要点は、下記3つです。
- 「不健康な期間」が最も長いのはバーレーンで17.4年。中東の富裕国が上位を独占した。
- G7(先進7カ国)の中ではアメリカが唯一トップ10入りし、国民は平均15.7年を不健康な状態で過ごす。
- これらの国々は平均寿命は長い傾向にあり、「長く生きること」と「健康に生きること」のギャップが課題となっている。
出典元:Ranked: Countries With the Most Years in Poor Health(Visual Capitalist, 2025年10月19日)
目次
「長生き=幸せ」ではない現実
私たちはしばしば「平均寿命」を国の豊かさや医療水準の指標として見てきました。しかし、「長く生きること」は、必ずしも「健康に長く生きること」を意味しません。
この問題に焦点を当てるため、海外のデータ分析メディア『Visual Capitalist』は、平均寿命(2025年国連推計)と健康寿命(2021年世界銀行データ)の差を計算。「不健康な状態で過ごす期間」が長い国のランキングを発表しました。
その結果は、多くの人の直感を裏切るものでした。
不健康な期間が長い国ランキング TOP 10
| 順位 | 国名 | 不健康な期間 | 平均寿命 | 健康寿命 |
| 1 | バーレーン | 17.4年 | 81.6歳 | 64.2歳 |
| 2 | オマーン | 17.3年 | 80.5歳 | 63.2歳 |
| 3 | エスワティニ | 16.9年 | 64.4歳 | 47.5歳 |
| 4 | カタール | 16.5年 | 82.7歳 | 66.2歳 |
| 5 | ボツワナ | 16.3年 | 69.4歳 | 53.1歳 |
| 6 | アフガニスタン | 16.1年 | 66.5歳 | 50.4歳 |
| 7 | アラブ首長国連邦 | 15.9年 | 83.2歳 | 67.3歳 |
| 8 | アメリカ合衆国 | 15.7年 | 79.6歳 | 63.9歳 |
| 9 | ペルー | 15.1年 | 78.1歳 | 63.0歳 |
| 10 | レバノン | 14.9年 | 78.1歳 | 63.2歳 |
ランキング上位には、バーレーン(17.4年)やカタール(16.5年)といった、潤沢な医療予算を持つはずの中東の富裕国が並びました。そして先進7カ国(G7)の中では、唯一アメリカが8位(15.7年)にランクインするという、衝撃的な結果となったのです。
なぜ豊かな国で「不健康な期間」が長いのか?
このランキングが示すのは、皮肉な現実です。中東の富裕国やアメリカは、高度な医療技術によって人々を「生かし続ける」ことには長けています。しかし、人々を「健康に保つ」ことには失敗している可能性が高いのです。
記事では、その原因を「急激な富がもたらしたライフスタイルの変化」にあると分析しています。
- 座りがちな生活
- 加工食品の普及
- 体を動かさなくなる空調の完備
特に米国の場合は、これに加えて国民皆保険制度がなく、所得層によって医療へのアクセスに大きな格差があること、さらに近年社会問題化しているオピオイド危機(医療用麻薬の乱用)や銃暴力といった、命は落とさずとも心身に深刻なダメージを残す問題が「不健康な期間」を押し上げていると専門家は指摘しています。
この海外のランキングは、日本の私たちにどう関係するのか?
日本は世界トップクラスの健康寿命を誇り、2019年WHO推計では健康寿命が男性72.6歳、女性75.5歳でした。平均寿命との差(不健康な期間)は男性約9年、女性約12年と、米国(15.7年)や中東富裕国(16〜17年)に比べて短いのが現状です。
出典元:Life expectancy and healthy life expectancy data by country(WHO2019年)
しかし、このランキングは、日本の未来にとっての重要な警告と捉えるべきです。
例えば、厚生労働省の最新調査によれば、日本の成人男性(20歳以上)の肥満者の割合(BMI25以上)は31.7%です。過去には2019年に33.0%を記録し、特に40代男性では39.7%に達していましたが、直近10年間では増加傾向が続いています。
出典元:令和4年国民健康・栄養調査結果の概要(厚生労働省2024年)
これは、米国や中東で問題となっている生活習慣病予備軍が、日本でも着実に増加していることを意味します。現在の日本の健康長寿は、あくまで過去の生活習慣の“遺産”であり、このままではいずれその貯金を使い果たすことになるでしょう。
比較して見えてくるポイント
このニュース、他の出来事と比べてみると、さらに深い意味が見えてきます。不健康な期間が長い国の2つのタイプ、「富裕国」と「低所得国」を比較してみましょう。
平均寿命
| 中東富裕国・アメリカ | サブサハラアフリカ諸国 |
| 80歳前後と非常に長い。高度医療によって命を長らえることはできる。 | 65歳前後と短い。感染症や栄養失調などで、健康を損なうとそのまま寿命に直結しやすい。 |
不健康の質
| 中東富裕国・アメリカ | サブサハラアフリカ諸国 |
| 肥満、糖尿病、心臓病といった生活習慣病が中心。長期にわたる慢性疾患との闘いが主となる。「長く、病と共に生きる」状態。 | 感染症、乳幼児死亡率の高さ、基本的な医療へのアクセスの欠如が中心。「健康に生きられる期間」そのものが短い。 |
課題の本質
| 中東富裕国・アメリカ | サブサハラアフリカ諸国 |
| 過剰な富と利便性がもたらした「豊かな国の病」。予防医療やライフスタイルの改善が最大の課題。医療費は高騰し続ける。 | 貧困やインフラ不足がもたらした「貧しい国の病」。公衆衛生の向上や基本的な医療の普及が最大の課題。 |
このように比較すると、同じ「不健康な期間が長い」という結果でも、その原因と背景は全く異なることがわかります。豊かな国々は、皮肉にもその豊かさゆえに、自ら不健康な期間を長引かせているのです。
重要キーワード
「健康寿命」とは?
人が障害となるような病気や怪我から解放され、「良好な健康状態」で生きることが期待される年数を指します。単に何歳まで生きるかを示す「平均寿命」に対し、何歳まで「健康に」生きられるかを示す指標です。この記事では、平均寿命からこの健康寿命を引いた差を「不健康な期間」と定義し、国の医療や生活の質を測る新しい物差しとして用いています。
「G7」とは?
フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの主要先進国を指す枠組みです。経済力や技術力で世界をリードするこれらの国々は、一般的に医療水準も高いと見なされています。それにもかかわらず、今回のランキングでアメリカがワースト10にランクインしたことは、経済的な豊かさが必ずしも国民の「健康な生活」を保証するわけではないという、重要な事実を浮き彫りにしています。
みんなの生声
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- 「不健康な期間」が最も長いのはバーレーンで17.4年。中東の富裕国が上位を独占した。
- G7(先進7カ国)の中では米国が唯一トップ10入りし、国民は平均15.7年を不健康な状態で過ごす。
- これらの国々は平均寿命は長い傾向にあり、「長く生きること」と「健康に生きること」のギャップが課題となっている。
あなたに問う
いやはや、金持ちの国ほど、不健康なまま長生きする時間が長いらしいで。なんや皮肉な話やな。最新の医療っちゅう、至れり尽くせりの高級布団で寝かされて、体は楽かもしれんけど、心はちっとも元気やない、みたいなこっちゃろか。
わてらの若い頃は、車もエアコンもなかったから、よう歩いたし、よう汗かいたわ。それが良かったんかもしれへんな。便利になるのはええことやけど、その分、自分の足で立って、自分の力で生きるっちゅう、当たり前の力が弱うなってるんやろな。
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