このニュースは、2025年7月8日、ブラジルの研究者が、100歳以上の超元気なお年寄りの細胞からiPS細胞を作り、その秘密を探っているという、海外のワクワクする話ですわ。なんであの人は、あないに元気で長生きなんか。その答えが、もうすぐ細胞レベルで分かるようになるんかもしれまへんな。
このニュースの要点は、下記3つです。
- ブラジルの研究者が、100歳以上の高齢者の細胞からiPS細胞を作り、長寿の謎を研究しています。
- コロナから回復した百寿者の細胞に注目し、その驚異的な回復力(レジリエンス)の解明を目指しています。
- この研究は、「弱点を探す」老化研究から、「強みを学ぶ」新しいステージへの転換を象徴しています。
出典元:Research on centenarians sheds light on cellular mechanisms of longevity (Genomic Press, 2025年7月8日)
目次
100歳を超える“スーパー老人”の細胞を丸裸に
ブラジルの『サンパウロ大学 』で、長寿の秘密を解き明かす、非常に興味深い研究が進められています。その主役は、100歳、さらには110歳を超えてもなお、健康に暮らす「百寿者(センテナリアン)」たちです。
この研究を率いるのは、ブラジル遺伝子研究の第一人者、マヤナ・ザッツ教授 (Professor Mayana Zatz)。彼女のチームに所属する若手研究者、マテウス・デ・カストロ博士 (Dr. Mateus Vidigal de Castro) は、これらの百寿者から採取した血液サンプルを基に、iPS細胞を作り出し、その細胞レベルでの謎に迫っています。
なぜコロナ禍で研究が加速したのか?逆境が生んだ、新しい視点
実はこの研究、新型コロナウイルスのパンデミックによって、大きな転機を迎えました。
デ・カストロ博士は、その経緯を次のように語ります。
パンデミックによって、ボランティアの家を訪問して血液サンプルを採取することが不可能になり、私は研究プロジェクトを全面的に見直すことを余儀なくされました
この逆境の中で、研究チームは新しい視点に気づきます。それは、「コロナに感染したにもかかわらず、重症化せずに回復した百寿者」という、極めて稀で、強靭な生命力を持つ人々に注目することでした。なぜ彼らの細胞は、若い世代でさえ命を落とした、未知のウイルスに打ち勝つことができたのか。その驚異的な回復力のメカニズムを解明することが、研究の新しい柱となったのです。
比較して見えてくるポイント
老化の謎を解き明かすために、科学者たちは“両極端”からアプローチしています。
アプローチ
| 今回の百寿者研究 | プロジェリア(早老症)研究 |
| 「なぜ、あの人はあんなに“ゆっくり”老いるのか?」という問いから出発し、極端に健康な老化のメカニズムを探ります。 | 「なぜ、あの子はあんなに“速く”老いるのか?」という問いから出発し、異常な老化のメカニズムを探ります。 |
目的
| 今回の百寿者研究 | プロジェリア(早老症)研究 |
| 健康長寿の“ブレーキ”となる、有益な遺伝子や細胞の働きを見つけ出し、加齢性疾患の予防や治療に応用することを目指します。 | 老化を異常に加速させる“アクセル”となっている、原因遺伝子などを特定し、その働きを止める治療法の開発を目指します。 |
このブラジルの研究は、iPS細胞研究で世界をリードする日本にとって、非常に大きな意味を持ちます。それは、老化研究の主戦場が、「どうすれば老化を“遅らせる”ことができるか」から、「なぜ、あの人たちは“老いない”のか」へと、その問いの立て方そのものが変わりつつあることを示しているからです。
これまでは、老化という“マイナス”をどう減らすか、という発想でした。しかし、百寿者の細胞研究は、彼らが持つ驚異的な回復力や抵抗力といった“プラス”の力を、どうすれば私たち一般人が手に入れられるか、という、より希望に満ちたアプローチを可能にします。日本のiPS細胞技術と、この新しい発想が結びついた時、全く新しいアンチエイジング治療が生まれるかもしれません。
重要キーワード
iPS細胞
皮膚や血液などの体細胞に、特定の遺伝子を導入することで作られる、様々な細胞に変化(分化)できる能力を持つ、特殊な幹細胞です。この記事の研究では、百寿者の細胞からiPS細胞を作ることで、彼らの細胞を“初期化”し、若い細胞と比較しながら、そのユニークな性質や老化への耐性を、研究室で詳しく調べています。
百寿者(センテナリアン)
年齢が100歳以上の人を指す言葉です。特に、110歳を超える人々は「スーパーセンテナリアン」と呼ばれます。彼らは、単に長生きであるだけでなく、多くの場合、加齢に伴う様々な病気への強い抵抗力を持っています。そのため、彼らの細胞や遺伝子を研究することは、健康長寿の秘密を解き明かすための、“生きた宝の山”だと考えられています。
みんなの生声
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- ブラジルの研究者が、100歳以上の高齢者の細胞からiPS細胞を作り、長寿の謎を研究しています。
- コロナから回復した百寿者の細胞に注目し、その驚異的な回復力(レジリエンス)の解明を目指しています。
- この研究は、「弱点を探す」老化研究から、「強みを学ぶ」新しいステージへの転換を象徴しています。
あなたに問う
あんたの周りにも、一人や二人、おるんとちゃいますか。「なんで、あの歳で、あないに元気なんやろ」て、首をかしげたくなるような、スーパーおじいちゃん、おばあちゃんが。
わしらはこれまで、なんで病気になるんか、なんで弱っていくんか、て、“悪いとこ”ばっかり見てきましたけどな。これからは、逆や。なんであの人は元気なんか、て、“ええとこ”を見習う時代なんやて。
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