
100歳を超えてもなお健康を維持する「百寿者」。彼らの驚異的な生命力の謎を細胞レベルで解き明かそうとする研究が、ブラジル・サンパウロ大学で進められていることが、このほど学術メディア「Genomic Press」のインタビューで明らかになりました。
このニュースの要点は、下記3つです。
- ブラジルの研究チームが、110歳以上の高齢者(百寿者)から採取した細胞をiPS細胞に変化させ、長寿のメカニズムを研究している。
- 特に、新型コロナウイルスから回復した百寿者の細胞を分析することで、その驚異的な「回復力」の秘密に迫ろうとしている。
- この研究は、将来的に加齢に伴う病気の予防や治療法開発に繋がる可能性を秘めている。
▼ 出典元
Research on centenarians sheds light on cellular mechanisms of longevity
iPS細胞で探る「百寿者」の細胞特性
サンパウロ大学の研究チームは、110歳以上の高齢者、いわゆる「スーパーセンテナリアン」の細胞に着目しています。
インタビューに応じたマテウス・ヴィディガル・デ・カストロ博士によると、チームは彼らの細胞からiPS細胞を作製し、若いドナーの細胞と比較する実験を行っています。この手法により、百寿者の細胞が持つ特有の分子メカニズムや、外部ストレスに対する応答の違いを観察できるといいます。
コロナ禍がもたらした新たな研究視点
当初、研究は長寿そのものに焦点を当てていましたが、新型コロナウイルスのパンデミックが新たな視点をもたらしました。研究チームは、ウイルス感染から回復した百寿者の細胞と、逆に若くして重症化・死亡した人々の細胞とを比較することで、単なる長寿だけでなく、病気に対する抵抗力のメカニズム解明へと研究を加速させました。
「超長寿」と「早期老化」の比較から本質へ
研究のもう一つの特徴は、「早期老化症(プロジェロイド症候群)」との比較研究にあります。これは、通常より速く老化が進行する稀な遺伝性疾患。
チームは、「驚異的に老化が遅い細胞」と「速い細胞」を比較分析することで、老化のペースを制御する根源的な細胞経路の特定を目指します。このアプローチは、将来的にがんや認知症といった加齢関連疾患の予防・治療法開発に重要なデータを提供すると期待されています。
研究はまだ初期段階にあるものの、百寿者の細胞生物学から得られる知見は、健康長寿社会の実現に向けた重要な一歩となる可能性があります。
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- ブラジルの研究チームが、110歳以上の高齢者(百寿者)から採取した細胞をiPS細胞に変化させ、長寿のメカニズムを研究している。
- 特に、新型コロナウイルスから回復した百寿者の細胞を分析することで、その驚異的な「回復力」の秘密に迫ろうとしている。
- この研究は、将来的に加齢に伴う病気の予防や治療法開発に繋がる可能性を秘めている。
あなたが100歳まで生きるかどうかは、誰にも分かりません。しかし、あなたが明日を健康に迎えられるかどうかは、今日のあなたの行動と、このような地道な研究の積み重ねにかかっています。未来を思って不安になる時間があるのなら、まずは今日の食事を、しっかり味わって召し上がってみてはいかがでしょうか。案外それが、一番の長寿の秘訣なのかもしれません。