
この記事では、海外の金融ニュースサイト「TrendPulse Finance」が報じた、高齢化社会がもたらす巨大な経済圏「長寿経済(ロンジェビティ・エコノミー)」の最新動向をご紹介します。
このニュースの要点は、下記3つです。
- 世界の高齢化が急速に進み、2030年までに70兆ドル(約1京円)規模の巨大市場「長寿経済」が生まれると予測されている。
- この市場の中心は、AI診断や介護ロボットなどの「ヘルスケア」、AIを活用した資産管理などの「金融」、高齢者向け住宅などの「不動産」である。
- テスラ社のヒューマノイドロボット「オプティマス」などが介護現場の人手不足を解消し、私たちの老後の生活を大きく変える可能性がある。
【出典元】
The Longevity Economy: Unlocking Trillion-Dollar Opportunities in Aging Populations
目次
高齢化はピンチじゃない?70兆ドル市場「長寿経済」の幕開け
世界は、かつてない速さで高齢化しています。2030年には世界の6人に1人が60歳以上となり、2050年には80歳以上の人口が4億2600万人を超えると予測されています。
多くの人がこれを社会的な「課題」や「危機」と捉えがちですが、経済の世界では全く異なる見方がされています。それは、70兆ドル(約1京円)もの巨大な経済的機会、すなわち「長寿経済(ロンジェビティ・エコノミー)」の誕生です。
この巨大市場は、高齢化する人々のニーズに応えるヘルスケア、金融、テクノロジーといった分野の革新によって牽引されています。
AI診断に介護ロボット。ヘルスケアはここまで進化する
長寿経済の最前線にいるのは、間違いなくヘルスケア分野です。特に、AIとロボット技術が、介護や医療のあり方を根底から変えようとしています。
AIによる画像診断は、アルツハイマー病のような加齢に伴う病気の早期発見に貢献し、個人の遺伝子情報に基づいた「パーソナライズド医療」も現実のものとなりつつあります。世界のヘルスケアAI市場は、2030年までに6138億ドルに達すると予測されており、その成長率は驚異的です。
さらに、テスラ社が開発するヒューマノイドロボット「オプティマス」のような介護ロボットが、深刻な人手不足に悩む介護現場の救世主となることが期待されています。2030年までに18万台以上が導入されると予測されており、介護の質を向上させるだけでなく、コスト削減にも大きく貢献する可能性があります。
あなたの老後資金はAIが守る?金融(フィンテック)の新たな潮流
高齢者層は、アメリカの富の75%を保有していると言われ、退職後の資産管理に対する需要が急増しています。従来の年金制度が揺らぐ中、その隙間を埋めているのがAIを活用した金融技術、いわゆる「フィンテック」です。
AIが自動で資産運用を行う「ロボアドバイザー」は、個人の健康寿命やライフプランを分析し、最適なポートフォリオを提案します。また、ブロックチェーン技術を活用した退職金管理システムや、自宅を担保に生活資金を得る「リバースモーゲージ」といった新しい金融商品も注目を集めています。
AI金融市場は、2024年の383億ドルから、2030年には1903億ドルへと成長する見込みです。テクノロジーが、長生きに伴うお金の不安を解消する強力なツールとなりつつあります。
不動産の未来は「シニア向け住宅」にあり
高齢者向け住宅の需要も急増しています。アメリカの不動産投資信託(REIT)であるヴェンタス社やウェルタワー社では、2030年までに施設の占有率が92%に達すると報告されています。
単なる老人ホームではなく、バリアフリー設計はもちろん、認知症ケア施設やフィットネスジム、コミュニティスペースなどを併設した「エイジフレンドリー」な複合型住宅が、不動産市場における新たな成長分野となっているのです。
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- 世界の高齢化が急速に進み、2030年までに70兆ドル(約1京円)規模の巨大市場「長寿経済」が生まれると予測されている。
- この市場の中心は、AI診断や介護ロボットなどの「ヘルスケア」、AIを活用した資産管理などの「金融」、高齢者向け住宅などの「不動産」である。
- テスラ社のヒューマノイドロボット「オプティマス」などが介護現場の人手不足を解消し、私たちの老後の生活を大きく変える可能性がある。
「長生きはリスク」と言われるようになって久しいですが、世界はそのリスクを巨大なビジネスチャンスへと転換すべく、すでに動き出しているようです。
私たちの不安をビジネスに利用されているようで、少し複雑な気持ちになるかもしれません。しかし、その結果として介護の負担が軽減されたり、将来のお金の心配が少なくなったりするのであれば、それは歓迎すべき変化と言えるのではないでしょうか。
あなたは、AIに介護される未来を、どのようにお考えになりますか?