
世にあふれる健康法の中から「本当に効く健康法」は何か、専門家が26項目を格付けした海外ポッドキャストを基に、私たちが時間とお金をかけるべき本当の優先順位について解説します。
この記事を読めば、下記3つのことがわかります。
- 専門家が「不可欠(Aランク)」と断言する、見過ごしがちな健康の土台。
- 話題のNMNやレスベラトロールが「潜在的に有害(Fランク)」と評価される理由。
- 数多の健康情報に惑わされず、自分にとって最適な選択をするための判断基準。
▼ 情報元紹介
- 講演者: マット・ケーバーライン(Matt Kaeberlein)教授
- 経歴: 米国の生物学者・バイオジェロントロジストであり、加齢メカニズムの研究で著名です。ワシントン大学名誉教授、Optispan社CEO、Dog Aging Project共同ディレクターとして活躍し、健康寿命延伸を目的としたトランスレーショナル研究を推進。250報以上の論文を発表し、米国科学振興協会、米国老化学会などのフェロー。エリソン財団やNIAなどから数々の賞を受賞しています
- 出典元: The Best Strategies for Living Longer RANKED: Longevity Tier List | 32 – HSM #7
※この記事は、講演の紹介であり、医学的アドバイスではありません。健康に関する判断は必ず医師にご相談ください。

NMNは飲むべき?断食は?なぜ専門家によって言うことが違うの?
テレビをつければ「断続的ファスティングで健康に!」と特集され、SNSを開けばインフルエンサーが「NMNサプリは必須」と語っている。かと思えば、別の専門家は「断食は筋肉を失う」「NMNは効果が証明されていない」と真っ向から否定する。一体、誰を信じればいいのか…。良かれと思って始めたサプリが、数ヶ月後には「実は腎臓に悪い」なんてニュースを目にして、血の気が引く。もう、何が正しくて何が間違っているのか分からない。新しい健康情報に触れるたびに、「これも試すべきか?」という期待と、「また失敗するんじゃないか」という恐怖の間で、心がすり減っていく。そんな経験はありませんか。
流行りの健康法に、もうお金と時間を無駄にするのはやめませんか?

正直に告白します。私も、かつては「健康情報ジプシー」でした。流行りのスーパーフードを試し、高価なサプリメントに手を出し、私の家の戸棚は、飲みかけでホコリをかぶったボトルの墓場のようでした。何をやっても長続きせず、目に見える効果もない。「自分は意志が弱いダメな人間なんだ」と、本気で落ち込んだこともあります。あなたには、私と同じように、希望と時間とお金を無駄にしてほしくない。もし、あなたが今まで結果を出せなかった原因が、あなたの意志の弱さではなく、努力する「順番」を間違えていただけだとしたら?土台がグラグラの家に、どんなに素敵な家具を置いても意味がないように、健康にも絶対に外してはいけない「土台」があるとしたら、知りたくはありませんか?
専門家が格付け。健康長寿のための「やるべき事」と「やらなくていい事」

この「健康法ティアリスト」は、そんな情報迷子にとっての、まさに羅針盤です。専門家たちは、数ある長寿戦略を、その重要度と科学的根拠に基づいて厳しく格付けしました。
Aランク:不可欠。全ての土台
ほとんど全ての人にとって、健康寿命を延ばすために絶対に欠かせないと専門家が断言する項目です。
- 口腔ケア(定期的な歯科検診、フロスなど): 全身の炎症や心血管疾患のリスクと直結しており、全ての健康の基本です。
- 睡眠: 心身の修復と再生に不可欠な、議論の余地のない最重要項目の一つです。
- 運動(筋力トレーニング & 有酸素運動): 老化に伴う筋力低下を防ぐ筋トレと、心肺機能を維持する有酸素運動は、両方ともAランク。特に筋トレの重要性は、もっと認識されるべきだとされています。
- 血液検査: 主要なバイオマーカーを定期的に把握し、自分の健康状態のベースラインを知ることは、あらゆる戦略の出発点となります。
- ホルモン補充療法(HRT): 医師の管理下でホルモン状態を把握し、必要に応じて適切に補充することは、多くの人々のQOLを劇的に改善します。
- 禁煙と節度ある飲酒: 健康への最大の投資であり、基本中の基本です。
Bランク:重要。土台を固めたら次に
Aランクの項目を実践した上で、さらなる最適化を目指す多くの人にとって重要となるツールです。
- DEXAスキャン(体組成測定): 筋肉量や脂肪量を正確に測定し、トレーニング効果を可視化します。
- 多発がん早期発見検査: 費用はかかりますが、がんの早期発見は非常に価値が高いです。
- クレアチン: 筋力維持に効果があるという科学的根拠が豊富で、多くの人にとって有益なサプリメントです。
- ビタミンD3: ただし、やみくもな摂取はNG。血液検査で測定した上で、不足している場合にのみサプリで補充すべきとされています。
- 遺伝子検査(APOE4など): 特定の疾患リスクを事前に知ることは重要ですが、結果の正しい解釈には専門家の助けが必要です。
Cランク:上級者向け
Aランク、Bランクを実践した上で、より高いレベルの健康管理を目指す人が検討する選択肢です。
- フィットネスウェアラブル: 必須ではありませんが、健康状態をモニタリングし、行動変容を促す貴重なツールになり得ます。
- ラパマイシン: 専門家と相談の上で、リスクとベネフィットを深く理解した人が検討するレベルの薬剤です。
- クロストレーニング: 自分に合っていれば良いですが、運動の最適化という観点からは必須ではありません。
Dランク:ほとんどの人には不要
現時点では科学的根拠が不十分であったり、より単純な方法で代替可能だったりする項目です。
- 生体インピーダンス体重計: 体重の変動を知るのに高価な機能は不要で、普通の体重計で十分です。
- エピジェネティック年齢検査: まだ研究ツールとしての側面が強く、具体的なアクションに繋がりにくいです。
- マイクロバイオーム(腸内細菌)検査: 腸内環境の重要性は認めつつも、現在の検査とサプリ推奨の科学的根拠はまだ十分ではありません。
- 断続的ファスティング/時間制限食: 体重管理のツールにはなり得ますが、カロリー制限以上の独立した健康効果があるというエビデンスはありません。
Dランク:該当なし
今回の専門家の議論では、Eランク(DとFの中間)に分類される項目はありませんでした。
Fランク:潜在的に有害
現時点では、人間における有効性の科学的根拠が乏しいだけでなく、潜在的なリスクも指摘されている項目です。
- NMN / レスベラトロール: 大きな注目を集めていますが、人間での効果は未だ証明されていません。特にNMNは、動物実験で腎臓へのダメージを示唆するデータもあり、専門家は「潜在的に有害」として最も低い評価を下しています。
このランキングが示すのは、「流行りの最新サプリ」よりも、退屈で基本的な日々の習慣こそが、あなたの未来を決定づけるという、揺るぎない事実です。
結論:最強の長寿戦略は、あなたの足元にあり

結局のところ、私たちが追い求めるべきだったのは、どこか遠くにある魔法の薬ではありませんでした。答えは、もっと身近で、基本的なことの中にあったのです。この格付けは、私たちに明確な行動指針を与えてくれます。
- まずは「Aランク」を完璧にする:
流行りのサプリや高価な検査に手を出す前に、まずは自分の睡眠、運動、口腔ケア、そして定期的な健康診断(血液検査)を見直しましょう。この土台がなければ、何を積み上げても意味がありません。 - 自分の現在地を知る:
血液検査や、必要であれば遺伝子検査(Bランク)で、自分の弱点やリスクを客観的に把握する。これが、パーソナライズされた健康管理の第一歩です。 - 情報に惑わされない「判断基準」を持つ:
次に新しい健康情報に触れた時、「それはAランクの土台よりも優先すべきことか?」と自問してみてください。このシンプルな問いが、あなたを不要な出費と時間の浪費から守ってくれるはずです。
健康とは、家を建てるようなもの。まずは、しっかりとした基礎工事(Aランク)から始めませんか。
みんなの生声
関連Q&A

Q. どの健康法が科学的根拠に基づいているのか本当にわかる方法は何か?
A. 一つの研究だけでなく、多くの専門機関や公的なガイドラインが長年にわたり推奨しているかを確認するのが一つの方法です。この記事の専門家がAランクとした運動、睡眠、口腔ケアなどは、まさにその代表例と言えます。逆に、登場して間もない情報や、個人の体験談が中心のものは、効果や安全性が確立されていない可能性が高いため、慎重に判断する必要があります。
Q. 医師は絶対にやらない健康法にはどんな危険性があるのか?
A. 最大の危険性は、効果が証明されていないだけでなく、長期的な安全性が不明である点です。この記事でFランクとされたNMNのように、動物実験で臓器への悪影響が示唆されるなど、予期せぬ健康被害のリスクが隠れている場合があります。医師が推奨しないのは、有効性と安全性の両面で、質の高い科学的データが不足しており、利益よりもリスクが上回る可能性があると判断しているためです。
Q. 効果の証明されたサプリメントは本当に少ないのか?
A. はい、「健康寿命の延伸」という広範な目的においては、多くのサプリメントで人間での有効性が明確に証明されているものはまだ少ないのが現状です。ただし、この記事の専門家がBランクとしたクレアチン(筋力維持)や、ビタミンD(骨の健康、ただし欠乏している場合)のように、特定の目的で有効性が示されている成分も存在します。問題は、効果が不明確な流行りのサプリが、基本的な生活習慣よりも重要であるかのように宣伝されている点です。
まとめ
あらためて、今日の話の要点をおさらいします。
- 本当に効く健康法は、睡眠・運動・口腔ケアといった、基本的な生活習慣である。
- 流行りのサプリ(NMN等)は、科学的根拠が乏しく、潜在的なリスクも。
- 健康への投資は、まずAランクの土台を固めてから、Bランクへと進むのが賢明。
世の中には、私たちの不安を煽り、「これさえあれば大丈夫」と囁く魅力的な健康情報が溢れています。しかし、本当の答えは、いつだって退屈で、地道なことの中にしかありません。熱が出た時に飲む風邪薬のように、確かな効果が証明されたものから、一つずつ試してみませんか。