
お隣の中国、日本がとっくの昔から悩んでる高齢化の問題にいよいよ本腰入れてきたみたいです。米国のニュースサイトCNBCが報じた、中国の新たな高齢者支援策について解説します。
このニュースの要点は、下記3つです。
- 中国政府が、要介護認定を受けた高齢者向けに、介護サービスの費用を補助する電子クーポンを導入する計画を発表したこと。
- この制度は、高齢化が進む中での家計の介護負担を軽減し、同時に国内の介護関連サービス(シルバーエコノミー)の消費を促すことを目的としていること。
- 専門家は社会保障を強化する一歩と評価しつつも、根本的な消費マインドの回復にはより大きな構造改革が必要だと指摘していること。
▼ 出典元
China plans subsidy vouchers for seniors to ease strain on its aging population, drive consumption
なぜ今、中国が「補助クーポン」を?背景にある深刻な高齢化
急速な少子高齢化は、もはや日本だけの課題ではありません。米国のニュースサイトCNBCが報じたところによると、中国政府は2025年7月23日、国内の深刻な高齢化問題に対応するため、新たな財政支援策を発表しました。
中国民政部と財政部の共同声明によれば、2024年末時点で中国の60歳以上の人口は約22%に達し、これは2020年の18.7%から大幅に増加しています。14億を超える人口を抱える国にとって、この数字は社会保障制度に計り知れない圧力をかけています。
この状況を受け、政府は家計の介護負担を直接的に和らげ、同時に国内消費を刺激する手段として、異例とも言える直接的な補助金政策に踏み切ることを決定しました。
誰が、いくら貰える?制度の具体的な中身
今回の支援策の核となるのは、月払いの電子クーポンです。しかし、これは全ての高齢者に配られるわけではありません。
まず、希望する高齢者は身体的な障害レベルに関する評価を受けます。その結果、「中度、重度、または完全な障害がある」と認定された人のみが、この補助金の対象となります。
補助額は、現時点では月額500元から800元(日本円で約1万円〜1万6千円)に設定されています。この電子クーポンは、食事や入浴の介助、リハビリテーション、デイケアといった、指定された介護サービス費用の一部として利用することができます。
この計画は、まず一部の都市で試験的に導入された後、年内に全国展開される予定で、期間は12ヶ月間とされています。
政府の狙いは「家計負担の軽減」と「国内消費の活性化」
中国政府がこれまで、米国や香港がパンデミック中に行ったような直接的な現金給付を避けてきた中、今回のクーポン導入には明確な2つの狙いがあります。
一つは、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのシニアエコノミストであるティアンチェン・シュー (Tianchen Xu) 氏が指摘するように、「家族にとっての重い介護負担」を軽減することです。
もう一つの大きな狙いは、国内消費の刺激です。北京のアドバイザー、アルフレド・モントゥファー=ヘル (Alfredo Montufar-Helu) 氏は、「高齢者介護が家計に与える経済的負担は、将来への不安から過度に貯蓄し、国内消費を抑制する大きな要因の一つ」と分析します。介護費用の一部を政府が肩代わりすることで、家計に生まれた余裕が他の消費(例えば観光など)に向かうことを期待しているのです。
専門家は「一歩前進」としつつも、課題を指摘
多くの専門家は、今回の措置を社会保障制度(セーフティネット)の強化に向けた「正しい方向への一歩」と評価しています。
しかし、モントゥファー=ヘル氏は、この補助金だけで介護サービスの需要が大幅に増加する可能性は低く、本格的な消費マインドの回復は、より広範な景気回復に依存すると指摘します。
また、ユーラシア・グループのアナリストは、中国が直面する人口動態と経済的圧力により、年金や医療制度の変更を含む社会政策全般の見直しが急務であると分析しています。今回のクーポン制度は、その大きな課題に向けた始まりに過ぎない、というのが専門家たちの一致した見解のようです。
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- 中国政府が、要介護認定を受けた高齢者向けに、介護サービスの費用を補助する電子クーポンを導入する計画を発表したこと。
- この制度は、高齢化が進む中での家計の介護負担を軽減し、同時に国内の介護関連サービス(シルバーエコノミー)の消費を促すことを目的としていること。
- 専門家は社会保障を強化する一歩と評価しつつも、根本的な消費マインドの回復にはより大きな構造改革が必要だと指摘していること。
もちろん、国がお金を出してくれるのはありがたい話です。でもその原資は、結局、国民が払っている税金です。クーポン一枚で、本当に“安心して老いる社会”は買えるのでしょうか?