
このニュースは、『ChatGPT』開発で知られる『OpenAI』のCEO、サム・アルトマン氏が出資する長寿研究スタートアップ『レトロ・バイオサイエンシズ』が、「脳のゴミ掃除」をして若返らせることを目指す新薬の臨床試験を、2025年末までに開始すると海外メディアが報じたものです。そんな夢みたいな薬、わしらみたいな一般人が普通に薬局で買える日は、一体いつになるんやろか?
このニュースの要点は、下記3つです。
- サム・アルトマン氏が出資する『レトロ・バイオサイエンシズ』が、アルツハイマー病などを対象とした「脳の若返り薬」の臨床試験を2025年末に開始予定。
- この薬は、細胞内の不要なたんぱく質を掃除する「オートファジー」を活性化させ、脳の老化を”逆行”させることを目指す。
- 同社は健康寿命を10年延ばすことを目標に掲げ、将来的には10億ドル(約1,500億円)規模の資金調達を目指している。
出典元:Sam Altman’s longevity startup is testing a pill for a younger brain (Business Insider, 2025年9月14日)
目次
ChatGPTの仕掛け人が次に狙う「脳の老化」
『ChatGPT』で世界を席巻した『OpenAI』のCEO、サム・アルトマン氏。彼が2021年に1億8000万ドル(約270億円)を投じて設立した長寿研究スタートアップが『レトロ・バイオサイエンシズ』です。
同社のCEOであるジョー・ベッツ=ラクロワ氏は、海外メディア『Business Insider』の取材に対し、2025年末までに最初の臨床試験を開始すると明言しました。対象となるのは、同社が開発した実験的な経口薬『RTR242』です。
この薬の目的は、アルツハイマー病などの原因とされる脳細胞内の「ガラクタ」を一掃し、脳の機能を若返らせることにあります。
なぜ画期的なのか?「逆行させる」新発想の薬
現在、アルツハイマー病の新薬として注目される『レカネマブ』などは、病気の進行を”遅らせる”ことを目的としています。しかし、『レトロ・バイオサイエンシズ』が目指すのは全く異なるアプローチです。
ベッツ=ラクロワCEOは、老化を遅らせる治療法を「手ぬるいソース」と表現し、自社の薬が目指す方向性を次のように語りました。
私は、老化の進行を遅らせる治療法よりも、老化を逆行させる治療法の方に興味があります。
『レトロ・バイオサイエンシズ』の薬は、細胞内の古くなったり壊れたりしたたんぱく質をリサイクルする仕組み、オートファジーを再び活性化させることを狙っています。この機能は加齢とともに衰えることが知られており、これを再起動させることで、特に脳細胞のダメージを修復できる可能性があるのです。
この技術がもたらす「新たな格差」という課題
一方で、この希望の光には大きな影も伴います。このような最先端の治療法は、開発に巨額の費用がかかるため、実用化された当初は非常に高額になることが予想されます。
その恩恵を受けられるのは、一部の富裕層に限られるかもしれません。そうなれば、経済力によって「健康に長生きできる人」と「そうでない人」が二極化し、健康寿命の格差がさらに拡大する恐れがあります。
「脳の若返り」が誰にでも平等に与えられる希望となるのか、それとも新たな社会の分断を生むのか。私たちは技術の進歩と同時に、その倫理的な側面にも目を向けていく必要があります。
比較して見えてくるポイント
このニュース、他の出来事と比べてみると、さらに深い意味が見えてきます。長寿研究における日米のアプローチを比較してみましょう。
研究の主体
米国(シリコンバレー型) | 日本(従来型) |
サム・アルトマン氏やジェフ・ベゾス氏など、巨大IT企業の創業者や投資家が個人資産を投じて研究を主導。スピード感が速い。 | 大学や国の研究機関、製薬会社が中心。基礎研究を重視し、実用化までのプロセスは慎重で時間がかかる傾向がある。 |
目標設定
米国(シリコンバレー型) | 日本(従来型) |
「健康寿命を10年延長」「老化を逆行」など、非常に野心的で破壊的な目標を掲げる。パラダイムシフトを目指す。 | 個別の疾患(がん、心臓病など)の治療法確立が主な目標。「老化」そのものを治療対象とする発想はまだ主流ではない。 |
技術的特徴
米国(シリコンバレー型) | 日本(従来型) |
AI(人工知能)を活用した創薬や、細胞の再プログラミングといった、異分野の最先端技術を積極的に融合させる。 | iPS細胞研究など、特定の分野で世界をリードする技術を持つが、分野横断的な応用や開発競争では後れを取る側面も。 |
このように比較すると、米国では「老化=治療すべき病」と捉え、巨大資本と最先端技術で一気に解決を目指す「ムーンショット型」のアプローチが主流であることがわかります。この動きは、日本の研究開発にも大きな影響を与える可能性があります。
重要キーワード
「レトロ・バイオサイエンシズ」とは?
『OpenAI』のCEOサム・アルトマン氏が2021年に1億8000万ドルを出資して設立した、米国の長寿研究スタートアップ。健康寿命を10年延ばすことを目標に掲げ、細胞の再プログラミングや自己免疫疾患治療など、複数の野心的なプロジェクトを同時に進めています。この記事では、「脳の若返り薬」の臨床試験を開始する主体として中心的な役割を担っています。
「オートファジー」とは?
日本語では「自食作用」と訳されます。細胞が内部の古くなったり不要になったりしたたんぱく質などを分解し、リサイクルする仕組みのことです。この機能は加齢とともに低下し、アルツハイマー病などの神経変性疾患の原因になると考えられています。記事中の新薬は、このオートファジーを再び活性化させることで、脳細胞内の”ゴミ”を一掃することを目指しています。
「細胞の再プログラミング」とは?
体の細胞に特定の遺伝子(山中因子など)を導入することで、細胞を初期化し、多能性を持つ若い状態に戻す技術です。iPS細胞の作製で知られます。『レトロ・バイオサイエンシズ』もこの技術に注力しており、『OpenAI』と共同で開発したAIモデル『GPT‑4b micro』によって、再プログラミングの効率を50倍向上させたと報告しています。長寿研究の最も過激で注目される分野の一つです。
みんなの生声
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- サム・アルトマン氏が出資する『レトロ・バイオサイエンシズ』が、アルツハイマー病などを対象とした「脳の若返り薬」の臨床試験を2025年末に開始予定。
- この薬は、細胞内の不要なたんぱく質を掃除する「オートファジー」を活性化させ、脳の老化を”逆行”させることを目指す。
- 同社は健康寿命を10年延ばすことを目標に掲げ、将来的には10億ドル(約1,500億円)規模の資金調達を目指している。
あなたに問う
いやはや、『ChatGPT』っちゅう賢いAIを作った人が、今度は「脳の若返り薬」に大金を注ぎ込んどるらしいわ。頭の中の“ゴミ掃除”をしてくれる薬やて。うちの台所の換気扇掃除も、それくらいパパッとやってくれたら助かるんやけどな。
まあ、そんな未来の心配するより、まずは今日からできる“脳のゴミ掃除”やな。クイズ番組で頭使ったり、新しいレシピに挑戦したり、近所の人とおしゃべりして笑ったり。それが一番お金もかからん、最高のアンチエイジングかもしれへんで。あんたはどない思う?
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