
この記事では、海外ニュースサイト「South China Morning Post」が報じた、シンガポールにおける保険会社主導の新たな健康増進プログラムについて開設します。
このニュースの要点は、下記3つです。
- シンガポールの保険会社が、健康増進プログラムに「ゲーミフィケーション(ゲームの要素)」を導入し、利用者の行動変容を促している。
- 歩数や睡眠時間などの健康活動でポイントが貯まり、現金や割引などの報酬(インセンティブ)と交換できる仕組みが人気を博している。
- この取り組みは、政策的に健康長寿を目指すシンガポールの「ブルーゾーン3.0」構想の一環であり、個人の努力と社会の仕組みを融合させた新しい健康管理の形として注目されている。
【出典元】
How to age well? Singaporean companies gamify health in ‘Blue Zone 3.0’ bid
目次
なぜシンガポールで「健康のゲーム化」が進んでいるのか?
世界トップクラスの長寿国でありながら、シンガポールは今、さらにその先を見据えています。オン・イェクン保健大臣が提唱する「ブルーゾーン3.0」構想。これは、人々が自然に健康的な生活を送れる地域「ブルーゾーン」を、国家の政策とテクノロジーによって意図的に創り出そうという壮大な試みです。
この構想の中心的な役割を担っているのが、AIAシンガポールやマニュライフ・シンガポールといった大手保険会社です。彼らは、単に病気になった時のリスクを補償するだけでなく、そもそも病気にならないための「予防」にビジネスの舵を切りました。
その具体的な手法が、健康管理アプリと「ゲーミフィケーション」の融合です。
ポイント、レベルアップ、そして報酬へ。ついハマる健康アプリの仕組み
AIAシンガポールが提供する「AIA Vitality」プログラムは、まさに健康をテーマにしたロールプレイングゲームのようです。
利用者はアプリを通じて、歩数計や心拍数のトラッキング、健康診断の受診、睡眠チャレンジといった「クエスト」に挑戦します。クエストをクリアするとポイントが貯まり、ステータスが「レベルアップ」。そのレベルに応じて、スーパーでのキャッシュバック、映画チケットの割引、ジムの会員権、さらには航空券のリベートといった様々な報酬(リワード)がアンロックされる仕組みです。
65歳の利用者、レズリー・クァクさんは、このプログラムに参加して以来、高かった血圧とコレステロール値が正常範囲まで改善しました。彼女は「健康への努力が目に見える形で報われることで、モチベーションが維持できる。まるで健康が報酬付きのゲームになったみたい」と語ります。
小さな目標達成でも報酬がもらえるのが特徴で、「今週は1万歩歩く」といったウィークリーターゲットを達成するだけで、毎週着実にリワードを得ることができます。この「つい続けてしまう」仕掛けが、多くの利用者の行動変容を後押ししているのです。
「ブルーゾーン3.0」が目指す、個人の努力と社会の仕組みの融合
この取り組みは、単なる企業のサービスに留まりません。シンガポール政府が推進する国民健康戦略「Healthier SG」や、高齢者が地域社会で健やかに歳を重ねることを支援する「Age Well SG」といった国家プロジェクトと密接に連携しています。
本来、自然発生的に文化や風土から生まれる「ブルーゾーン」に対し、シンガポールは政策によって健康長寿を実現する「ブルーゾーン2.0」と見なされてきました。そして今、保険会社が提供するアプリのような民間のサービスと連携し、健康的な生活が社会全体に根付く「ブルーゾーン3.0」へと進化しようとしているのです。
このプログラムの効果は数字にも表れており、2024年12月末時点で、メンバーの健康診断結果において血糖値で71%、血圧で48%、コレステロールで32%の改善が見られたと報告されています。
個人の「頑張り」を、ゲームのような楽しさと実利的な報酬で後押しし、社会全体で健康を支える。これこそが、シンガポールが描く未来の健康管理の姿なのです。
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- シンガポールの保険会社が、健康増進プログラムに「ゲーミフィケーション」を導入し、利用者の行動変容を促している。
- 歩数や睡眠時間などの健康活動でポイントが貯まり、現金や割引などの報酬(インセンティブ)と交換できる仕組みが人気を博している。
- この取り組みは、政策的に健康長壽を目指すシンガポールの「ブルーゾーン3.0」構想の一環であり、個人の努力と社会の仕組みを融合させた新しい健康管理の形として注目されている。
そろそろ本気で健康管理をしなければいけないことは、重々承知している?しかし、その「そろそろ」を実践に移すことが、何よりも難しいのではないでしょうか。
シンガポールのように、努力がポイントとして貯まり、割引などの分かりやすい形で返ってくるのであれば、私たちももう少し頑張れるのかもしれません。
あなたのスマートフォンに入っている歩数計アプリ、最後に開いたのはいつでしたでしょうか。