
このニュースは、2025年8月5日、米国で老人ホームの建設が建設費の高騰と深刻な人手不足により全く追いついていない、という海外のレポートが出た話ですわ。高齢者はどんどん増えるのに、住む場所が建たない。これ、明日の日本の姿かもしれへんで。あんた、自分の終の棲家、ほんまに見つかると思いますか?
このニュースの要点は、下記3つです。
- 米国で80歳以上の人口が急増する一方、老人ホームの新規建設が経済の不透明さで停滞しています。
- 原因は、深刻な建設費の高騰と、40万人規模という建設業界の人手不足です。
- 結果、採算が合う富裕層向けの豪華な施設ばかりが増え、一般層の選択肢が狭まる懸念があります。
目次
アメリカで高齢者の「住まい」が消えていく
『米国高齢者住宅協会(ASHA, American Seniors Housing Association)』のために建設会社『ワイツ・カンパニー (The Weitz Company) 』が作成した最新レポートによると、米国のシニアリビング市場は深刻な課題に直面しています。シニアリビングとは、自立型から介護付きまで、米国の高齢者向け住宅全般を指す言葉です。
80歳以上の人口が急速に増加しているにもかかわらず、新しい施設の建設は2025年前半に著しく減速しました。『ASHA』のデイブ・シュレスCEO (Dave Schless) は、「新しい建設の採算を合わせることが、いかに困難になっているかを浮き彫りにしている」と、現状への強い懸念を表明しています。
なぜ建設が止まるのか?「40万人の人手不足」と「高すぎる建設費」
レポートでは、新規建設が進まない主な原因として、2つの大きな問題を指摘しています。
- 建設業界の人手不足:
建設業界は、既存のプロジェクトを完了させるためだけでも40万人の労働者が不足しているという危機的な状況です。 - 建設費の高騰:
資材費の上昇は続いており、建設インフレ率は2026年には4%〜7%に達すると予測されています。
これでは、新しい施設を建てようにも、建てるヒトも、建設費を賄うカネもない、という八方塞がりの状態なのです。
結果、どうなる?採算が合う「富裕層向け施設」ばかりになる未来
建設コストが高騰する中で、事業者が利益を出すためには、必然的に高価格帯の施設を建てるしかありません。
レポートによると、一般的な木造の施設に比べ、鉄骨やコンクリートで造られた豪華なアメニティ付きの施設の建設が中心になる可能性が示唆されています。具体的な建設コストは、介護付き住宅の場合、1平方フィートあたり363ドル〜452ドル(1平方メートルあたり約58万〜72万円)にもなります。
これは、採算の取れる高価格帯の施設だけが建設され、一般的な中間層向けの施設の供給が滞る、施設の二極化が進むことを意味します。
比較して見えてくるポイント
このアメリカの状況、わが国・日本と比べてみると、他人事ではないことがよく分かります。
直面する課題
アメリカ | 日本 |
高齢者人口の急増、建設コストの高騰、そして深刻な人手不足。まさに今、需要と供給のミスマッチが大きな社会問題化しています。 | 米国と全く同じ課題を抱える、いわば「課題先進国」です。特に地方では、施設の老朽化や介護人材の不足がより深刻化しています。 |
市場の方向性
アメリカ | 日本 |
採算性を重視した結果、富裕層向けの豪華な施設と、最低限のケアを提供する施設への二極化が進むと予測されます。 | 公的介護保険制度があるため、米国ほど急激な二極化はありません。しかし、保険外の高級サービスを提供する施設は年々増加傾向にあります。 |
アメリカで今起きていることは、数年後の日本の姿を映す鏡と言えるでしょう。公的な制度があるからと安心していると、気づいた時には選択肢がなくなっているかもしれません。
重要キーワード
「シニアリビング(Senior Living)」とは?
これは、米国の高齢者向け住宅全般を指す言葉です。日本の「老人ホーム」よりも広い意味を持ち、自立して生活できる人向けの施設(インディペンデントリビング)から、日常生活の支援が必要な人向けの施設(アシステッドリビング)、そして高度な医療ケアを提供する施設(スキルドナーシング)まで、様々な種類が含まれます。この記事では、この市場全体が供給不足の危機に瀕していることが示されています。
みんなの生声
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- 米国で80歳以上の人口が急増する一方、老人ホームの新規建設が経済の不透明さで停滞しています。
- 原因は、建設費の高騰と、40万人規模という深刻な建設業界の人手不足です。
- 結果として、主に富裕層向けの、豪華で高価な施設ばかりが目立つようになる可能性が指摘されています。
あなたに問う
人様の建てた家に入る算段ばっかりしてんと、自分の“終の棲家”は、自分で建てなあかんのちゃうか?土台になるお金も大事や。せやけど、もっと大事なんは、あんたを支えてくれる、達者な体と達者な仲間っちゅう柱やで。国や会社があてにならん未来やからこそ、最後に頼りになるんは、自分の体と、笑い合える友達や。
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