
このニュースは、2025年8月2日、アメリカの『オハイオ州立大学』の研究で、「海の近くに住む人は寿命が長い傾向がある」と示された、という海外の話ですわ。海が見える暮らし、そりゃあ素敵やけどな。けど、同じ水の近くでも、都会の川や湖のそばやと、話が違うみたいなんよ。住む場所で寿命が変わるなんて、わしらの暮らしにも関わる大事な話やで。
このニュースの要点は、下記3つです。
- 海の近くに住む人は、平均寿命(79歳)より1年以上長く、約80歳まで生きる傾向が示されました。
- 一方、都会の川や湖の近くに住む人は、逆に約78歳と、寿命が短い傾向が見られました。
- この差は、気候や所得、運動機会など、住む場所の環境要因(ブルースペースの質)が影響していると推察されます。
参考論文:Unveiling complexity in blue spaces and life expectancy (Environmental Research, 2025年5月27日)
目次
住む場所で寿命が変わるという、新たな「健康格差」
『オハイオ州立大学 (The Ohio State University) 』の研究チームは、米国の66,000以上の国勢調査地区のデータを分析し、住む場所と平均寿命の関係性を調査しました。
その結果、海やメキシコ湾から約30マイル(約48km)以内に住む人々は、米国の平均寿命である79歳よりも1年以上長く、約80歳まで生きる傾向があることが明らかになりました。しかし、驚くべきことに、都会で大きな川や湖の近くに住む人々は、逆に約78歳と、平均より寿命が短い傾向が見られたのです。
研究が示す「寿命を左右する要因」
では、なぜ海沿いと都会の湖畔で、このような差が生まれるのでしょうか。
研究チームは、寿命に影響を与える可能性のある、複数の要因を挙げています。
【海沿いのプラス要因】
- 温暖な気候と、きれいな空気
- レクリエーション(運動など)の機会が豊富
- 交通の便が良い
- 干ばつの影響を受けにくい
- 所得水準が比較的高い
【都会の湖畔のマイナス要因】
- 汚染の問題
- 貧困
- 安全に運動できる機会の不足
- 洪水のリスク
研究に携わったヤンニ・カオ氏 (Yanni Cao) は、「汚染や貧困、安全な運動機会の欠如、洪水リスクの増加などが、この差を生む要因である可能性が高い」と説明しています。
比較して見えてくるポイント
「水の近くに住む」という同じ条件でも、場所によってこれほどの違いがあるようです。
環境と健康
海沿いの暮らし | 都会の湖畔の暮らし |
温暖な気候やきれいな空気、運動機会の多さなど、健康を促進するプラスの環境要因が多いと推察されます。 | 大気汚染や洪水リスク、貧困といった、健康を阻害するマイナスの環境要因が、水の近くという利点を上回ってしまう可能性があります。 |
経済的な側面
海沿いの暮らし | 都会の湖畔の暮らし |
比較的所得水準が高く、経済的な安定が健康寿命に繋がりやすいと考えられます。一種の「富裕層エリア」と言えるかもしれません。 | 都市部では、水辺が必ずしも高級住宅街とは限らず、貧困層が集中するエリアも存在し、経済格差が健康格差に直結している可能性があります。 |
単に「水の近く」というだけでなく、その周辺の社会経済的な環境が、私たちの寿命に大きな影響を与えていることが分かります。
このアメリカの研究は、他人事ではありません。日本でも、「タワーマンションの高層階と低層階で健康寿命が違う」といった研究があるように、「住む場所が健康を左右する」という事実は、もはや常識となりつつあります。
今回の研究は、私たちが家を選ぶ際に、「駅からの距離」や「日当たり」といった従来の価値観だけでなく、「その地域は、安全に運動できるか?」「空気はきれいか?」「災害リスクはどうか?」といった、より長寿に直結する視点を持つことの重要性を示唆しています。
重要キーワード
「ブルースペース(Blue Space)」とは?
海、湖、川、運河など、人々が健康的な活動を行える水辺の環境全般を指す言葉です。公園や森林などの「グリーンスペース」と対になる概念で、近年、心身の健康に良い影響を与えるとして世界的に研究が進んでいます。今回の研究は、このブルースペースが寿命に与える影響を調査したものであり、「ただ水辺であれば良いわけではない」という、その「質」の重要性を私たちに教えてくれます。
みんなの生声
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- 海の近くに住む人は、平均寿命(79歳)より1年以上長く、約80歳まで生きる傾向が示されました。
- 一方、都会の川や湖の近くに住む人は、逆に約78歳と、寿命が短い傾向が見られました。
- この差は、気候や所得、運動機会など、住む場所の環境要因(ブルースペースの質)が影響していると推察されます。
あなたに問う
「たった1年の差なんて、誤差みたいなもんや」と思うかもしれん。せやけどな、何万人もの人生を集めて、統計っちゅう厳しい目でふるいにかけた後でも、くっきりと残った、意味のある「1年」なんやで、これは。わしらが気にするべきは、「海」そのものやない。その研究が教えてくれた、長生きできる環境の“レシピ”(きれいな空気、安全な散歩道、災害の少なさ)の方や。
▼あわせて読みたい▼ 住む場所も大事。では、あなたの体の中で起きている「老化」の真実とは。
▼あわせて読みたい▼ どんなに良い場所に住んでも、一人では意味がない?科学が示す「孤独」と認知症の関係。