
このニュースは、アメリカの名門『イェール大学』が、100年というとんでもない時間をかけて、「どこに住むと長生きできるか」を調べた、という海外の研究の話ですわ。驚くのはな、昔、長寿やった州が、今ではすっかり短命になってもうたんやて。長生きできるかどうかは、あんた一人の努力だけやない。住む場所や、国のあり方が、知らん間にわしらの寿命を左右しとるんかもしれまへんな。
このニュースの要点は、下記3つです。
- 『イェール大学』が、米国の州ごとの平均寿命に関する100年間のデータを分析し、発表しました。
- 1990年代以降、州ごとの健康格差が急激に拡大し、かつての長寿州と短命州が逆転しています。
- この格差は、各州の公衆衛生政策(禁煙政策など)への投資の差を反映していると指摘されています。
参考論文:All-Cause Mortality and Life Expectancy by Birth Cohort Across US States
目次
「生まれた場所」で寿命が20年も違うという現実
米国東部の名門、『イェール大学』公衆衛生大学院の研究チームが、100年という壮大なスケールで、米国民の寿命に関する衝撃的な事実を明らかにしました。
2025年4月に学術誌『JAMA Network Open』に発表されたこの研究は、過去1世紀以上にわたる1億7900万件以上の死亡記録を分析。その結果、住んでいる州によって平均寿命に絶望的とも言えるほどの大きな差が存在することが分かったのです。
例えば、ニューヨーク州やカリフォルニア州のような地域では、この100年で寿命が20年以上も延びました。一方で、ミシシッピ州やアラバマ州といった南部の州では、特に女性において、寿命の延びがわずか3年未満にとどまるという驚くべき結果が出ました。
専門家が語る「公衆衛生の格差」
では、なぜこのような逆転劇が起きたのでしょうか。研究を率いた公衆衛生学の専門家、エリカ・ウォーレン氏 (Erica Warren) は、その原因を各州の政策の違いにあると指摘します。
1980年代以降、一部の州は、タバコ税の導入、大気汚染防止法の制定、国民皆保険の推進といった、健康に直接影響する政策に積極的に投資しました。これらの政策を採用しなかった州は、取り残されてしまったのです。
つまり、個人の健康意識だけでなく、住んでいる州の「健康への投資度」が、そこに住む人々の寿命を大きく左右するようになったのです。
比較して見えてくるポイント
この米国内の格差は、国際的なレベルで見ると、さらにその異常さが際立ちます。
vs 国家間の寿命差
米国内の健康格差 | 日本と発展途上国 |
最も平均寿命が高い州(ハワイ)と、最も低い州(ミシシッピ)の差は、先進国である日本と、発展途上国との差に匹敵するほど巨大です。 | 世界銀行のデータによると、日本の平均寿命は84.5歳ですが、一部の発展途上国では60歳代前半です。米国内の格差は、これに近いレベルです。 |
vs 他の先進国
米国内の健康格差 | 欧州諸国など |
多くの先進国では、国内の地域間格差は、ここまで大きくありません。米国の格差の大きさは、先進国の中では際立っています。 | 国民皆保険制度などが充実しているため、米国内で見られるような極端な地域間格差は、比較的小さい傾向にあります。 |
一つの国の中に、先進国レベルの長寿地域と、発展途上国レベルの短命地域が同居している。それが、現代アメリカの抱える深刻な現実なのです。
このアメリカの100年研究は、私たち日本の未来を考える上で、極めて重要な教訓を与えてくれます。日本は、世界トップクラスの平均寿命を誇る長寿国です。しかし、その内側では、都道府県や市区町村による健康格差が、静かに、しかし確実に広がりつつあります。
健康は、個人の努力や心がけだけで決まるものではありません。私たちが住む自治体が、健康的な食事にアクセスしやすい環境を整えているか。安全に運動できる公園や道路を整備しているか。そして、質の高い医療に誰もが平等にアクセスできるか。そうした社会全体の「健康への意思」が、私たちの未来の寿命を左右するのです。
重要キーワード
「健康格差」とは?
住む地域や社会経済的な状況、人種といった、本人にはどうすることもできない要因によって、健康状態に差が生じることです。この記事では、100年という長い時間軸の中で、州ごとの政策の違いが、いかにしてこの健康格差を拡大させ、さらには逆転させてしまったかという、歴史的な現実を明らかにしています。
「公衆衛生」とは?
個人の病気を治す「医療」とは異なり、社会全体の仕組みを通じて、人々が病気になることを予防し、健康で長生きできる社会を目指す取り組みのことです。感染症対策、禁煙政策、大気汚染対策、健康教育などが含まれます。この記事では、この公衆衛生への投資の有無が、州ごとの寿命を決定づけた、と指摘されています。
みんなの生声
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- 『イェール大学』が、米国の州ごとの平均寿命に関する100年間のデータを分析し、発表しました。
- 1990年代以降、州ごとの健康格差が急激に拡大し、かつての長寿州と短命州が逆転しています。
- この格差は、各州の公衆衛生政策(禁煙政策など)への投資の差を反映していると指摘されています。
あなたに問う
「健康は自己管理から」て、よう言いますわな。それも、もちろん大事なこっちゃ。
せやけどな、周りを見渡せば、新鮮な野菜が手に入りにくかったり、安心して散歩できる道がなかったり。個人の努力だけでは、どうにもならんこともあるのが、世の中や。
「この町は、わしらが元気に長生きできる場所になっとるやろか?」て、あんたが住む町のこと、わがこととして、ちょっとだけ関心を持つことかもしれへんな。
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