
このニュースは、2025年7月24日、世界で一番お金を医療に使っとるアメリカが、実は先進国の中で平均寿命が一番低いレベルや、という海外の分析が出た話ですわ。高いお金払うて、ええ治療受けとるはずやのになんでや?て思いますやろ。この奇妙な話、わしらの日本の未来にとっても、大事な教訓が隠されとるかもしれまへんで。
このニュースの要点は、下記3つです。
- 米国は医療費が世界最高水準にも関わらず、平均寿命は先進国の中で最低レベルの世界48位に低迷しています。
- 原因は、国民皆保険がなく所得や人種で生じる「健康格差」と、経済的苦境が生む「絶望の病」です。
- これは、日本の未来にとっても「対岸の火事」ではない、深刻な社会問題の表れと言えます。
出典元:US life expectancy vs. the world in 2025:Where do Americans stand? (The Times of India, 2025年7月24日)
参考文献:Life Expectancy by Country 2025 (World Population Review)
目次
「医療大国」アメリカの、不都合な真実
経済大国であり、最先端の医療技術を持つアメリカ。しかし、その国民の平均寿命は、他の先進国と比べて著しく低いという事実が、改めて浮き彫りになりました。
最新のデータによると、米国の平均寿命は77.5歳。これは、世界ランキングで48位に位置し、G7(先進7カ国)の中ではもちろん、多くの国々よりも低い水準です。一方で、国民一人当たりの医療費支出は世界で最も高く、年間12,555ドル(約190万円)にも上ります。世界一お金をかけているのに、国民は長生きできていないのです。
なぜ寿命が縮むのか?「健康格差」と「絶望の病」という2つの闇
この奇妙なパラドックスの背景には、アメリカ社会が抱える2つの深刻な問題があります。
原因①:富裕層のための医療制度が生む「健康格差」
この奇妙なパラドックスの背景には、アメリカ社会が抱える根深い問題があります。その一つが、医療制度が生み出す「健康格差」です。
日本と違い、米国には全国民を対象とした公的な医療保険制度がありません。そのため、所得や人種によって受けられる医療の質に大きな差が生まれています。裕福な層は最先端の医療を受けられますが、貧困層は基本的な治療さえ受けられないケースが少なくありません。健康が、本人の努力だけでなく、経済力に大きく左右される社会なのです。
原因②:社会が生んだ現代病、「絶望の病」の蔓延
そして、もう一つの深刻な問題が、「絶望の病」の蔓延です。これは、ノーベル賞経済学者アンガス・ディートン氏らによって提唱された概念で、自殺、薬物過剰摂取、アルコール性肝疾患という、経済的な困窮や社会的な孤立といった「絶望」を背景として増加する死因の総称です。
特に、グローバル化によって製造業が衰退した「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」などでは、職を失った中年層が希望を失い、この「絶望の病」によって命を落とすケースが急増。これが、国全体の平均寿命を押し下げる、極めて大きな要因となっているのです。
比較して見えてくるポイント
このアメリカの状況、日本の私たちと比べてみると、その違いが鮮明になります。
医療制度の思想
- 米国:医療は「個人が選択するサービス」という考え方が基本。自由競争を重んじる一方、経済力による格差が生まれやすい構造です。
- 日本:医療は「国民全員が受けるべき権利」という考え方が基本。国民皆保険制度により、所得に関わらず、誰もが一定水準の医療を受けられます。
主な健康課題
- 米国:所得や人種による「アクセスの格差」と、経済的な絶望からくる「心の病」が、国全体の寿命を押し下げる大きな要因となっています。
- 日本:生活習慣病や高齢化に伴う認知症などが主な課題です。米国ほど極端なアクセスの格差はありませんが、地域による医療の質の差は存在します。
アメリカの事例は、私たちが当たり前だと思っている「いつでも、どこでも、誰でも」病院にかかれる日本の制度が、いかに貴重であるかを逆説的に教えてくれます。
このアメリカのニュースは、私たち日本の未来にとって、他人事ではありません。日本は、世界に誇る国民皆保険制度のおかげで、米国のような極端な健康格差は、これまで抑えられてきました。
しかし、少子高齢化による財源の悪化や、地方の医師不足など、私たちの医療制度も盤石ではありません。もし、この制度が揺らげば、日本でも「お金がなければ、健康も、命も、手に入らない」という、アメリカのような社会が訪れる可能性は、決してゼロではないのです。
重要キーワード
「健康格差」とは?
住む地域や社会経済的な状況、人種といった、本人にはどうすることもできない要因によって、健康状態に差が生じることです。この記事では、米国の国民皆保険制度の欠如が、いかにして深刻な健康格差を生み出し、国全体の平均寿命を押し下げる原因となっているかを明らかにしています。
「絶望の病」とは?
経済的な困窮や社会的な孤立といった「絶望」を背景として増加する、自殺、薬物過剰摂取、アルコール性肝疾患の3つの死因の総称です。ノーベル賞経済学者アンガス・ディートンらによって提唱されました。米国の寿命を縮める大きな要因として、この記事でも中心的に扱われています。
みんなの生声
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- 米国は医療費が世界最高水準にも関わらず、平均寿命は先進国の中で最低レベルの世界48位に低迷しています。
- 原因は、国民皆保険がなく所得や人種で生じる「健康格差」と、経済的苦境が生む「絶望の病」です。
- これは、日本の未来にとっても「対岸の火事」ではない、深刻な社会問題の表れと言えます。
あなたに問う
風邪ひいたら、いつでもお医者さんに行ける。そんな当たり前のことが、どれだけありがたいことか、わしら、時々忘れてしまいますな。
アメリカの現実を見た後やと、よう分かります。
わしらが毎月払っとる健康保険料はな、決して誰かのために消えていくお金やない。それは、「いつ病気になっても、お金の心配せんと病院に行ける」という、“今のあんた”の安心を買うための一番大事な経費なんや。
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