
このニュースは、2025年6月16日、カナダの大学が行った約40万人の大規模調査で、「孤独を感じている高齢者の方が、そうでない人より死亡リスクが低かった」という、これまでの常識をひっくり返す研究結果が発表された、という海外の驚きの話ですわ。孤独は体に悪い、て、わしら、ずーっとそう聞かされてきましたけどな。一体、どないなっとるんやろか。
このニュースの要点は、下記3つです。
- 在宅介護を受ける高齢者約40万人を調査した結果、孤独な人の方が1年以内の死亡リスクが18〜23%低いことが判明しました。
- ただし、これは「孤独が良い」という意味ではなく、「健康状態の悪化が孤独感を生む」という逆の因果関係を示唆しています。
- 専門家は、孤独が精神的な幸福感を損なう重要な問題であることに変わりはない、と強調しています。
出典元:Lonely Older Adults May Actually Live Longer, Surprising Study Shows (StudyFinds, 2025年6月16日)
「孤独は体に悪い」という“常識”が覆った日
「孤独はタバコ15本分の害がある」——これは、これまで公衆衛生の分野で広く信じられてきた言葉です。しかし、カナダの『ウォータールー大学 』の研究チームが、医学誌『JAMDA』に発表した最新の研究は、この常識に真っ向から異を唱えるものでした。
研究チームは、カナダ、フィンランド、ニュージーランドの3カ国で、在宅介護サービスを受ける高齢者、合計383,386人のデータを1年間にわたり追跡。その結果、驚くべきことに、「孤独を感じている」と回答した高齢者の方が、そうでない高齢者に比べて、1年以内の死亡リスクが18%から23%も低いことが明らかになったのです。
なぜ、これまでの常識と“真逆の結果”が出たのか?
このパラドックスの鍵は、「調査対象の違い」にあります。これまでの多くの研究は、比較的健康な一般の高齢者を対象としていました。しかし、今回の調査対象は、全員が在宅介護サービスを受けている、より支援が必要な高齢者層です。
この違いから、研究チームは2つの重要な仮説を提示しています。
- 因果関係の逆転:
「孤独が、健康を悪化させる」のではなく、「健康状態が悪化するにつれて、人々は社会活動から引きこもり、孤独になっていく」のかもしれません。つまり、孤独感は原因ではなく“結果”である、という可能性です。 - 在宅介護サービスの介入効果:
看護師や介護士による定期的な訪問が、意図せずして社会的な繋がりとして機能し、孤独がもたらす本来の健康リスクを和らげている可能性も指摘されています。
比較して見えてくるポイント
同じ「孤独」というテーマでも、誰を対象にするかで、その意味合いは大きく変わるようです。
孤独と健康
- 今回の研究(在宅介護を受ける高齢者):孤独を感じている人の方が、身体機能が保たれている傾向が見られました。孤独感は、健康悪化の“結果”である可能性が示唆されます。
- 従来の多くの研究(一般の高齢者):孤独を感じている人の方が、死亡リスクが高いという結果が一貫して示されてきました。孤独が、健康悪化の“原因”と捉えられています。
背景にあるもの
- 今回の研究(在宅介護を受ける高齢者):介護サービスの介入という、外部からのサポートが存在します。これが、孤独の持つ本来の毒性を中和している可能性があります。
- 従来の多くの研究(一般の高齢者):外部からのサポートが体系的に提供されているわけではなく、孤独が直接的に健康リスクに繋がりやすい環境にあると考えられます。
この研究は、「孤独は悪だ」という単純なレッテル貼りに警鐘を鳴らしています。もちろん、孤独が精神的な幸福感を損なうことは間違いありません。研究の責任者であるジョン・ハーズ教授 (Dr. John Hirdes) も、「孤独があなたを殺さなくても、その精神的健康への影響は、公衆衛生上の重要な優先事項です」と強調しています。
しかし、この研究が教えてくれるのは、高齢者が「孤独だ」と訴える時、その背景には、私たちがまだ気づいていない、深刻な健康問題が隠れているかもしれない、という新しい視点です。単に「元気を出して」と励ますだけでなく、「どこか体の調子が悪いのではないか?」と、一歩踏み込んで耳を傾ける。その優しさが、本当にその人の命を救うことになるのかもしれません。
重要キーワード
「在宅介護」とは?
高齢者が、施設に入居するのではなく、自宅で暮らしながら、入浴や服薬管理といった日常生活の支援を受けるサービスです。この記事の研究対象は、この在宅介護を受けている、特に支援が必要な高齢者層に限定されています。この「対象者の限定」こそが、これまでの研究と全く逆の結果を生み出した、最も重要なポイントです。
「因果関係の逆転」とは?
「Aが原因で、Bという結果が起きる」と信じられていた関係が、実は「Bが原因で、Aという結果が起きていた」と判明することです。今回の研究は、「孤独が病気を生む」のではなく、「病気が孤独を生む」のかもしれない、という、因果関係の逆転の可能性を示した点で、非常に重要な意味を持っています。
みんなの生声
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- 在宅介護を受ける高齢者約40万人を調査した結果、孤独な人の方が1年以内の死亡リスクが18〜23%低いことが判明しました。
- ただし、これは「孤独が良い」という意味ではなく、「健康状態の悪化が孤独感を生む」という逆の因果関係を示唆しています。
- 専門家は、孤独が精神的な幸福感を損なう重要な問題であることに変わりはない、と強調しています。
あなたに問う
「おじいちゃん、最近元気ないな。孤独なんかな」て、心配になること、ありますわな。
けど、今回の話を聞くと、わしらが心配すべきは、その「孤独」っちゅう気持ちの、もっと奥にあるもんかもしれまへん。
あんたの親御さんが「誰とも話したないわ」て言うとき、それはほんまは、「しんどくて、人と話す元気もないんや」ちゅう、体からの大事なSOSサインとちゃいますか?わしらは、心の声だけやのうて、体の声も、ちゃんと聞いてあげなあきまへんな。
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