
この記事では、老年学の専門家であるケリー・バーンライト (Kerry Burnight) 博士が提唱する、人生の後半を豊かに過ごすための新しい考え方「喜び寿命 (Joyspan)」について解説します。
この記事を読めば、下記3つのことがわかります。
- 漠然とした「長生きへの不安」の正体と、人生を好転させる新しい指標「喜び寿命」
- 幸福感を科学的に高めるために、今日から実践できる4つの必須要素「C.O.R.E.」
- 失敗や変化を恐れず、前向きな毎日を送るための具体的な考え方と習慣の作り方
▼ 情報元紹介
- 話し手: ケリー・バーナイト(Kerry Burnight)博士
- 経歴: 南カリフォルニア大学で老年学の博士号を取得し、カリフォルニア大学アーバイン校医学部で18年以上教授を務めた老年学専門家です。高齢者問題の研究・教育・啓発に尽力し、米国ホワイトハウスなど政府機関の高齢者サミットにも参加。著書やメディア出演を通じて老年学分野で幅広く活躍しています。
- 出典元: Joyspan with Dr. Kerry Burnight
「どうせ私には無理…」鏡の前でため息をつく、そんな毎日を変えませんか?

「人生100年時代」という言葉を聞くたびに、胸がザワザワしませんか?テレビで特集される元気なシニアを見ても、「これは特別な人の話だ」と他人事に感じてしまう。朝、鏡に映る自分を見ては増えていくシワや白髪にため息をつき、「健康でいられるだろうか」「お金は足りるのか」「最後は一人ぼっちになるんじゃないか」…そんな漠然とした長生きへの不安が、霧のように心を覆っていく。
周りの友人は趣味や旅行の話で盛り上がっているけれど、自分は心から楽しめない。新しいことを始める気力も湧かず、かといって今の生活に満足しているわけでもない。ただ時間だけが過ぎていく感覚。
このまま歳を重ねていくことが、正直言って怖い。そんなふうに感じているのは、あなただけではありません。実は、多くの人が同じような悩みを抱えながら、その解決策を見つけられずにいます。この記事は、そんなあなたのためのものです。ただ長生きするのではなく、「喜び」と共に生きるための、科学的で、誰にでも実践できる方法をご紹介します。
「友達を増やそう」が苦痛…これまで何度も失敗してきた自分でも大丈夫?

これまで、あなたも変わろうと努力してきたのではないでしょうか。「ポジティブになろう」と自己啓発本を読んでみたり、「新しい趣味を見つけよう」と地域のサークルを覗いてみたり。でも、現実はどうでしたか?
- 「人見知りなのに、今さら新しい友達なんて作れない…」
- 「若い頃と違って、新しいことが全然覚えられない」
- 「頑張って笑顔を作ってみても、顔が引きつるだけで心が疲れてしまう」
挑戦してはうまくいかず、そのたびに「やっぱり自分はダメなんだ」と自己嫌悪に陥る。そんな経験を繰り返してきたかもしれません。私もそうでした。だから痛いほど気持ちがわかります。
世の中には「明るく生きよう」という言葉があふれていますが、それがどれほど難しいことか。まるで、自分だけが世界の楽しさから取り残されているような孤独感。しかし、もしこれまでのやり方が間違っていただけだとしたら?もし、生まれつきの性格を変えなくても、ほんの少し視点を変えるだけで人生が好転する方法があるとしたら?この先に書かれているのは、根性論や理想論ではありません。30年以上にわたる老年学研究が導き出した、あなたの「今」を変えるための具体的な設計図です。
科学が示す、人生後半を豊かに生きるための具体的ロードマップ

漠然とした不安を打ち破る鍵は、具体的な知識と実践です。老年学者のバーンライト博士は、長年の研究から、人生の質を高めるための明確な指標と、それを実現するための具体的な方法論を導き出しました。これらは、あなたの不安を自信に変えるための、科学的根拠に基づいた処方箋です。
新指標「喜び寿命 (Joyspan)」で人生の質を測る
私たちはこれまで、寿命の長さ(Lifespan)や、健康な期間(Healthspan)を延ばすことに注力してきました。しかし博士は「人生を愛せなければ、健康で長生きしても意味がない」と指摘します。そこで提唱されるのが「喜び寿命 (Joyspan)」です。これは、長寿における幸福感や満足感を経験する期間を指します。幸福 (Happiness) が外部の出来事に左右される一時的な感情なのに対し、喜び (Joy) は困難な状況下でも感じられる、満足感に近い持続的な感情です。この内なる「喜び」を育むことが、豊かな人生の土台となります。
科学的根拠に基づく4つの行動原則「C.O.R.E.」
では、どうすれば「喜び寿命」を延ばせるのか。博士は、幸福な長寿に不可欠な要素は4つに集約されると発見しました。それが「C.O.R.E.」です。
- C – Connect (繋がる): ハーバード大学の85年間の研究でも証明された通り、「良い人間関係」は幸福と健康の最大の決定要因です。
- O – Open (心を開く/適応する): 人生の変化を恐れず、柔軟に対応する能力。それは衰えではなく、新しいライフスタイルへの「適応」です。
- R – Reach (到達する/成長し続ける): 「もう年だから」を捨て、新しいことを学び、挑戦し続けること。その行為自体が脳を活性化させます。
- E – Extend (広げる/与える): 自分の知識や経験、親切を他者に「与える」こと。小さなことでも「誰かの役に立っている」という感覚が、人生の目的意識に繋がります。
親との関係が変わる「自律性」という視点
自分だけでなく、高齢の親との関係も大きなテーマです。「良かれと思って言っているのに、全然聞いてくれない」と感じる時、それは親が「自律性 (Autonomy)」を守ろうとしているサインかもしれません。子供は親の「安全性」を優先しがちですが、高齢者には「自分の人生を自分で決めたい」という強い欲求があります。まずは「自分の方がよく知っている」という思い込みを捨て、親の話に耳を傾け、その意思を尊重する姿勢が、固く閉ざされた扉を開く鍵となります。
「まあ、いいか」から始まる、毎日が楽しくなる好循環

これら4つの柱「C.O.R.E.」を意識することで、あなたの日常は少しずつ、しかし確実に変わり始めます。
例えば、「成長 (Reach)」を意識して新しいオンライン講座に申し込む。すると、そこで新しい「繋がり (Connect)」が生まれるかもしれません。その新しいコミュニティに適応 (Open) し、自分の経験を誰かに「与える (Extend)」ことで、新たな生きがいが見つかる。
このサイクルは、どこから始めても構いません。最初の一歩は、ほんの小さなことでいいのです。失敗したらどうしよう?そんな時は、魔法の言葉「まあ、いいか」を思い出してください。これは挑戦を続けるための最強の口癖です。一つの失敗は、単なるデータ収集。うまくいかない方法が一つわかっただけのことです。
完璧を目指す必要はありません。昨日よりほんの少し、バッターボックスに立つ回数を増やしてみる。その小さな挑戦の積み重ねが、気づけばあなたを「なぜか人生がうまくいく明るい人」へと変えていきます。あなたの「喜び寿命」を育てる旅は、今日この瞬間から始まるのです。
みんなの生声
関連Q&A

Q. 長生きに伴う不安を軽減する方法は何か?
A. 専門家は、新しい挑戦で「成長」し、人との「繋がり」を保ち、変化に「適応」し、経験を誰かに「与える」ことの重要性を指摘します。これらは漠然とした不安を、具体的な生きがいに変える力があります。金融計画や健康診断といった物理的な備えと同時に、こうした心の持ち方を意識し、小さな一歩から始めることが大切です。
Q. 高齢者の経済的不安と健康不安の違いは何か?
A. 健康不安は「今まで出来たことが出来なくなる」という心身の質の低下や、介護状態になることへの恐れを指します。一方、経済的不安は「生活を維持できなくなる」という、貯蓄の枯渇や医療・介護費の増大への懸念です。両者は密接に連動しており、健康状態の悪化が直接的に経済的な困窮につながるケースも少なくありません。
Q. 長寿社会で「ピンピンコロリ」を目指すのは現実的か?
A. 誰もが望む理想ですが、統計的には必ずしも現実的とは言えません。多くの場合、健康寿命と平均寿命の間には、介護などを必要とする期間が存在します。「ピンピン」の期間を一日でも長くするための予防医療や健康習慣こそが、結果的に理想に近づくための最も現実的な方法と言えるでしょう。
まとめ
あらためて、今日の話の要点をおさらいします。
- 人生の豊かさは寿命の長さではなく、「喜び寿命 (Joyspan)」で決まる。
- 喜び寿命は「繋がる・適応する・成長する・与える」という4つの柱で構成される。
- 失敗を恐れず挑戦し、「まあ、いいか」と切り替える実験精神が好循環を生む。
この記事で紹介した4つの柱は、暗闇を照らす確かなコンパスになります。まずは一番できそうなことから、ほんの少しだけ試してみてください。
Joyspan: The Art and Science of Thriving in Life’s Second Half (English Edition)