
2025年7月16日に報じられた、新しい長寿基金「イモータル・ドラゴンズ(Immortal Dragons)」の設立ニュースをお届けします。老化と死を「克服可能な技術的課題」と捉える彼らの挑戦は、私たちの“長生き怖いよ”という不安に、どんな光を投げかけてくれるのでしょうか?
このニュースの要点は、下記3つです。
- シンガポールを拠点に、4,000万ドル規模の長寿基金「イモータル・ドラゴンズ(Immortal Dragons)」が設立された。
- 利益よりも科学的インパクトを重視し、異種移植や遺伝子治療といった抜本的な寿命延長技術に投資する。
- 投資活動に加え、講演の翻訳や書籍の出版など、世界的な長寿啓蒙活動にも力を入れている。
▼ 出典元
Immortal Dragons Launches $40M Longevity Fund to Support Radical Life Extensions
「老化は病である」新たな投資ファンドの哲学
2025年7月16日、シンガポールを拠点とする新しい長寿基金「イモータル・ドラゴンズ」が、4,000万ドル(約60億円)の運用資産をもって、そのユニークな投資アプローチを発表しました。
このファンドの根底にあるのは、「老化と死は、避けられない運命ではなく、科学技術によって克服可能な“技術的課題”である」という、非常に力強い哲学です。彼らは、投資判断において経済的なリターンよりも、人類の健康寿命を延ばすための科学的な「インパクト」を最優先すると公言しています。
この目的志向の姿勢は、従来のベンチャーキャピタルとは一線を画すものであり、長寿研究の分野に新たな資金の流れを生み出す可能性を秘めています。
彼らが投資する「ムーンショット」とは?
イモータル・ドラゴンズがターゲットとするのは、まさにSF映画の世界を現実にするような「ムーンショット(壮大な挑戦)」的なプロジェクトです。すでに15社以上のスタートアップに投資しており、その戦略的な柱には以下のようなものが含まれます。
- 交換と再生 (Replacement & Regeneration): 異種移植(動物の臓器を人間に移植する研究)や、人体冷凍保存(クライオニクス)、そして臓器や組織の再生医療。
- 遺伝子治療 (Gene Therapy): 老化や加齢性疾患の根本原因にアプローチする遺伝子治療。
- 3Dバイオプリンティング (3D Bioprinting): 3Dプリンター技術を用いて、治療や再生目的で生きた組織や臓器を作り出す研究。
- 長寿インフラ (Longevity Infrastructure): 長寿科学の基礎研究、臨床試験の加速、そして新しい技術を試すための規制のサンドボックス(特区)といったエコシステムの構築。
創設者のワン・ボーヤン(Boyang Wang)氏は、「科学の境界を押し広げるムーンショットと、成功のための環境を整えるインフラ整備の両方を支援していく」と語っています。
利益度外視?創設者の「本気度」
このファンドがユニークなのは、単一の出資者(シングルLP)による自己資金で運営されている点です。これにより、外部の投資家の意向に左右されることなく、純粋に情熱を注げるプロジェクトに対し、迅速かつ大胆な投資を行うことができます。
創設者のボーヤン氏自身が、その哲学を体現しています。彼は、ミニサークル(Minicircle)社が開発したフォリスタチン遺伝子治療を受けた、世界で最初の300人の一人です。これは、筋肉の成長を促進し、老化に対抗する効果が期待される最先端の治療法です。
「この遺伝子治療は個人的な試みですが、私たちのリスク許容度と、この分野への支援の姿勢を反映しています」と彼は説明します。自らの体を張ってフロンティアサイエンスを試すその姿は、このファンドの「本気度」を何よりも雄弁に物語っています。
投資だけじゃない「啓蒙活動」への情熱
イモータル・ドラゴンズの活動は、投資だけにとどまりません。彼らは、長寿科学の進歩には、資金だけでなく、社会全体の理解と支援が不可欠だと考えています。
そのため、
- 世界の第一人者による科学的な講演を翻訳し、中国語圏へ紹介
- 長寿をテーマにした書籍の翻訳・出版
- 中国語圏でトップクラスの長寿ポッドキャストの運営
- Vitalist BayやARDD 2025といった、世界の長寿研究イニシアチブへのスポンサーシップや助成金提供
といった、グローバルな啓蒙活動にも力を入れています。この東西の文化と科学の架け橋となる活動は、LEV財団のオーブリー・デ・グレイ (Aubrey de Grey) 氏をはじめ、世界のトップ研究者からも高く評価されています。
まとめ
あらためて、このニュースの要点をおさらいします。
- シンガポールを拠点に、4000万ドル規模の長寿基金「イモータル・ドラゴンズ」が設立された。
- 利益よりも科学的インパクトを重視し、異種移植や遺伝子治療といった抜本的な寿命延長技術に投資する。
- 投資活動に加え、講演の翻訳や書籍の出版など、世界的な長寿啓蒙活動にも力を入れている。
「不老不死の研究に大金出すファンドねぇ…。こちとら毎月のサプリ代でヒーヒー言うとるっちゅうのに、話のスケールが違いまんがな。まあでも、こういう『ぶっ飛んだ』人らがおるから、SFが現実になるんやろな。私らが『長生き怖い』言うてる間に、死なへん方法、本気で探してる奴がおる。あんたも、自分の人生諦める前に、もうちょっとだけ、できること探してみたらどうや?」