
この記事では、栄養学の専門家、ニック・バリンジャー博士と機能医学の専門家、ガブリエル・リヨン博士の対談に基づき、巷で話題の「体に悪い食べ物と老化」の関係と、その科学的な真実について解説します。
この記事を読めば、下記3つのことがわかります。
- カロリーゼロの人工甘味料が、実はあなたのDNAを傷つける可能性があるという衝撃的な研究結果。
- 「シードオイルは毒」は本当?インターネットで話題の健康情報について、専門家が下す科学的な結論。
- 40歳からの老化に抗う!筋肉を維持し、健康的な体を保つための、タンパク質と炭水化物の正しい摂り方。
▼ 情報元紹介
- 話し手: ニック・バリンジャー(Nick Barringer)博士、ガブリエル・リヨン(Gabrielle Lyon)博士
- 経歴: ニック・バリンジャー博士/アメリカの登録栄養士・栄養学博士。米陸軍特殊作戦部隊などで戦術アスリート向けの栄養戦略を研究・指導。ウエストポイント米陸軍士官学校で教鞭も執る。|ガブリエル・リヨン博士/アメリカの内科医・機能医学専門家。筋肉中心医学(Muscle-Centric Medicine)を提唱し、加齢予防や代謝改善、ボディメイクを重視した栄養と運動の実践法を指導。著書『Forever Strong』はベストセラーに。
- 出典元: The Truth About Seed Oils, Sweeteners and Your Health w/ Nick Barringer PhD
※この記事は、講演の紹介であり、医学的アドバイスではありません。健康に関する判断は必ず医師にご相談ください。
そのダイエット飲料、本当に安心?カロリーゼロの裏で、何かが蝕まれていませんか?

仕事の合間に飲む、一本のダイエット飲料。シュワっとした喉越しの後に広がる、罪悪感のない甘さ。カロリーはゼロ。糖質もゼロ。「これなら太らない」と、自分に言い聞かせるように毎日飲んでいる。
でも、本当にそれだけでしょうか?
最近、なんだか集中力が続かない。夜、しっかり寝たつもりでも、朝の目覚めがスッキリしない。肌の調子も、なんとなく優れない。年齢のせいだと片付けているけれど、心のどこかで、あの「カロリーゼロ」の甘さに、一抹の不安を感じてはいませんか?
「人工甘味料は体に悪い」という噂は、昔から何度も耳にしてきた。でも、具体的な根拠はよく分からないし、大手メーカーの商品だから大丈夫だろう、と見て見ぬふりをしてきた。この、小さな不安の積み重ね。それは、あなたの体が発している、聞こえにくいけれど、非常に重要なSOSサインなのかもしれません。
いつまで“流行りの健康法”に振り回されますか?私はそれで遠回りし続けました

これは過去の私自身に、何度でも言い聞かせたい言葉なのです。
私もかつては、「健康情報」の探求者でした。「シードオイルは毒だ」と聞けば、家の油をすべて捨て、「完全無欠コーヒー」が流行れば、朝食をバターコーヒーに替える。しかし、流行りを追いかければ追いかけるほど、私の体調は一向に安定せず、むしろ「何が正しいのか分からない」という情報過多の混乱に陥っていきました。
お金と時間をかけて、必死に「正解」を探し求めていたのに、気づけば、ただ流行に振り回され、自分の体と向き合うことを忘れていたのです。あの時の、何を信じればいいのか分からない無力感と焦燥感。だからこそ、あなたに伝えたい。大切なのは、極端な理論に飛びつくことではありません。科学の原則に立ち返り、自分の体と対話し、地に足のついた選択を積み重ねることなのです。
老化の真犯人は「誤解」。これが栄養学の不都合な真実

40代、50代からの不調や老化の加速。その原因は、あなたが「体に良い」と信じて疑わなかった食品や習慣に隠されているかもしれません。栄養生理学の専門家バリンジャー博士は、巷に溢れる栄養学の常識に、科学のメスを入れます。
人工甘味料はDNAを傷つける
「カロリーゼロだから安心」。その考えは、今すぐ改める必要があるかもしれません。2023年のある研究で、ダイエット飲料に広く使われる人工甘味料スクラロースが、体内でDNAを損傷する可能性のある物質に変化することが示唆されました。さらに、腸内細菌によって、摂取したスクラロースの最大10%がこの有害物質に変換されうるという動物実験のデータもあります。
バリンジャー博士は、肥満に悩む人が砂糖入り飲料の代替として一時的に利用することまでは否定しませんが、「無頓着に摂取すべきではない」と警告します。もし甘味料を選ぶなら、ステビアやモンクフルーツの方が、より安全な選択肢であると述べています。
食用色素(赤色40号など)の必要性
子供の多動性(ADHD)との関連が指摘される食用色素。バリンジャー博士のスタンスは非常に明快です。「そもそも、食品に着色する必要はありますか?」と。
美味しそうな色を付けるためだけに使われる食用色素は、健康上のメリットが何一つありません。ビーツ由来の天然色素など、より安全な代替品があるにもかかわらず、わざわざ石油由来の合成着色料を摂取する必要はない、というのが博士の結論です。これは、リスクとベネフィットを考えれば、誰にでもできる賢明な選択と言えるでしょう。
「シードオイルは毒」の真偽
インターネットで「毒」とまで言われるキャノーラ油や大豆油などのシードオイル。博士は、「それがひどく有害であることを示す決定的な科学的証拠はない」と、過剰な恐怖論を否定します。しかし、高温で加熱した際の酸化や、現代人に不足しがちなオメガ3脂肪酸とのバランスを考えれば、積極的に摂るべきものではない、というのが博士の見解です。加熱調理にはアボカドオイルやバター、サラダにはオリーブオイルなど、より安定した油を選ぶのが賢明です。
自分の体、本当に理解していますか?
「なんとなく不調」や「痩せにくさ」の原因は、目に見えない体の内側にあるかもしれません。栄養バランスや将来の病気リスクを、自宅で手軽にチェックできる検査キットで把握し、自分だけの健康戦略を立ててみませんか?
解決策は「原則回帰」。今日から始める科学的食事術

では、氾濫する情報の中から、私たちは何を選び取れば良いのでしょうか。その解決策は、奇抜な方法ではなく、科学的な原則に立ち返ること。40歳からの老化に抗い、筋肉を守るための、具体的で実践的な食事戦略を紹介します。
1. タンパク質:筋肉の材料を最優先
40歳を過ぎると、意識しなければ筋肉は年々減少していきます。筋肉の減少は、代謝の低下、肥満、糖尿病のリスクに直結します。バリンジャー博士は、食事設計の最優先事項としてタンパク質の確保を挙げます。
- 摂取量の目安: 目標体重1kgあたり1.6〜2.2g。これは国の推奨量より多いですが、筋肉を維持し、老化に抗うためには不可欠です。
- タンパク源: 鶏胸肉、赤身肉(博士はバイソンや鹿肉を推奨)、魚、卵などを中心に、毎食しっかり摂りましょう。
2. 炭水化物:「運動のご褒美」と心得る
「炭水化物を摂る権利は、運動して稼ぐもの」。これが博士のユニークな哲学です。若い頃と違い、40歳以降は、運動せずに摂取した過剰な炭水化物は、脂肪として蓄積されやすくなります。
- 摂取量の目安: 最低でも1日100gは必要ですが、それ以上はその日の活動量に応じて調整します。デスクワークの日と、ジムで汗を流した日では、食べるべき量は異なります。
- 質の選択: 同じ炭水化物でも、食物繊維が豊富な果物、芋類、全粒穀物を選びましょう。
3. 脂質:過剰に恐れず、賢く選ぶ
脂質は、ホルモンの材料となる重要な栄養素です。過度に避ける必要はありませんが、「何を」「どれくらい」摂るかが重要です。博士は、タンパク質と炭水化物をしっかり摂れば、脂質は自然と適量に収まると言います。シードオイルなどの精製された油を避け、魚やアボカド、ナッツなど、自然な食品から摂ることを心がけましょう。
みんなの生声
関連Q&A

Q. 老化を促進する食べ物の具体的な特徴は何か?
A. 老化を促進する食べ物の多くは、「精製されている」「栄養価が低い」「炎症を引き起こしやすい」という特徴があります。具体的には、砂糖や人工甘味料、白い小麦粉(パン、パスタ)、そしてシードオイルなどの精製された油です。これらの食品は、血糖値を急上昇させ、体内で慢性的な炎症を引き起こし(糖化)、細胞の老化を早める原因となります。
Q. 加工食品と自然食品の老化防止効果の違いは何か?
A. 自然食品(野菜、果物、肉、魚など)には、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質といった、細胞の老化を防ぐ栄養素が豊富に含まれています。一方、加工食品は、製造過程でこれらの貴重な栄養素の多くが失われ、代わりに老化を促進する砂糖、悪い油、塩分、化学添加物が大量に加えられます。老化防止のためには、食品の「原型」が分かる、できるだけ加工されていない自然食品を選ぶことが基本です。
Q. 高塩分や高糖分が体に与える長期的な影響は何か?
A. 高塩分の食事は、高血圧を通じて血管にダメージを与え続け、心臓病や脳卒中のリスクを高めます。また、胃がんや自己免疫疾患との関連も指摘されています。高糖分の食事は、血糖値の乱高下を引き起こし、血管を傷つける「糖化」を促進して全身の老化を早めます。長期的には、インスリン抵抗性を招き、2型糖尿病や肥満、さらには認知症のリスクにも繋がります。
まとめ
あらためて、今日の話の要点をおさらいします。
- カロリーゼロの人工甘味料には、DNAを傷つける潜在的なリスクがある。
- 「シードオイルは毒」は過剰な恐怖論。しかし、加熱調理にはより安全な油を選ぶのが賢明。
- 40歳からの老化防止の鍵は「筋肉」。十分なタンパク質と、活動量に見合った炭水化物が不可欠。
巷に溢れる健康情報の大波の中で、私たちは何を信じ、何を選べば良いのか、途方に暮れてしまうことがあります。しかし、その答えは、意外とシンプルなのかもしれません。バリンジャー博士が教えてくれたのは、極端な理論ではなく、科学的な原則に立ち返り、自分の体と対話することの大切さでした。